前編で登場した徳山高専のプレゼン
チャレンジ賞 福島高専「排水の陣」
続きましてチャレンジ賞を受賞した福島高専のチームで「排水の陣」です。
タイトル
RWPシステム 水がたまらないまちを作る
課題
「最初は水たまりのない道路を構想していました。 本システムの名前のRWPは、水たまりのない道路、Road without puddlesの頭文字から取っています。 構想の中で、私たちが住むいわき市(福島県)について調べていき、雨が少ないことによる排水整備の未整備や冠水、洪水対策の重要性に気がつきました」
提案
「日本古来の技術に着目した結果、今回の提案、電力に頼らない動力に至りました。霞堤(かすみてい)と保水剤を組み合わせた新時代の雨水貯留施設というのがRWPシステムのテーマになります」
RWPシステム
「雨水の貯留、排水機能を持つ従来の道路に霞堤を導入し、機能向上させた新しい治水システムです。このシステムでは、水位の上昇と自然流下を利用して、電力を用いずに雨水の保有と排出を行います」
ここで霞堤の説明もありました。
「霞堤とは、戦国時代に武田信玄が考案した合理的な治水システムと言われています。簡単に説明すると、普段は河川を流れている水が、洪水時には堤防の開口部から流出して水を逃がして堤内地で一時的に保留をします。それによって流量を減少させて、洪水が収まり次第、水を排水する仕組みとなっております」
このシステムを道路に適用させたのがRWPシステムです。紹介されたパネルを引用して説明しましょう。
次に非常時です。
次に排水時です。
効果
検証装置を試行錯誤して一から完成させたそうです。検証から得た結論は?
「主要効果1つが冠水の防止です。透水性舗装により浸透した雨水を地下を通して排水できます。 また、このシステムの最大の強みが雨水の流出抑制効果です。この効果により、河川の氾濫や洪水など水害、水害による被害を軽減させさせることができます」
このシステムを活用することで、ヒートアイランド現象の抑制とグリーンインフラ化への適用にも効果があるとか。
まとめ
「今後の展望です。 私たちは1年間でやってきましたが、今後はシミュレーションなどを活用して実現に向けた耐久性や性能の検証を行っていきたいと思っています。最後に、このシステムの具体的な使用機会や維持管理方法を確立し、管理方法や更新についても 本質の現実に向けて考えていきたいと思っています。ご清聴ありがとうございました」
排水の陣さん、ありがとうございました。
雨水をコントロールできるようになったら、災害や事故も少なくなるはず。実現してほしいです。
地域賞 豊田高専「早坂・大畑Lab.」
続いて地域賞を受賞した豊田高専(愛知)のチームで「早坂・大畑Lab.」です。
タイトル
安全管理支援システムの開発
課題
「令和4年度の業種別の死亡災害者数では建設業の労働災害の死亡者数が最多人数を記録しました。災害の要因は墜落、転落事故が最も多くなっております」
現場管理者の墜落制止用器具の監視が令和4年1月より義務付けられても完璧な実践は難しいようです。
「実際の現場では、高所作業車の墜落制止用器具の装着忘れや、そもそも安全について義務付けられた規制の改善を知らない人もいて、現場管理者は複数の現場を掛け持ちする場合、常に使用状況を監視することは不可能といった問題点が挙げられました。「そこで墜落制止用器具の装着忘れの発見と遠隔で墜落制止用器具の装着を監視するシステムに開発を試みました」
提案
「AIを活用して安全管理を行うシステムを開発しました。こちらがシステムの構成になります」
YOLOv5(パネル内の左側)
「AIを用いて、人に装着されている器具の有無を認識します。AIカメラにより現場管理者たちには、全ての作業員の安全装備の着用状況を写真と解析結果をLineで送信します」
LINEメッセージAPI(パネル内の中央)
「結果がLINEメッセージAPIに送信されます。このサーバーは使用することで、現場管理者の端末のLINEに送信する役割を持っています」
現場管理者(パネル内の右側)
「指定したLINEのトークルームに情報が送られます。こうして現場管理者たちは全ての作業員の安全装備の着用状況を完全に掌握することできるようになります」
今後の予定
「新しく装備発見システムというものの開発を試みようと予定しています。 墜落制止用器具、また小さな工具などの紛失を防ぐためにBLEタグ(近くにある物を無線でつなげるBluetoothの一つ)をつけた装具をタブレット端末で捜索できるシステムの開発を行っていく予定です。 こちらの課題としてBLEタグの大きさは小さな工具に貼れるように可能な限り小さくすることと、位置を推定する精度を高めていく必要があるのではないかと考えております。 以上になります。ご清聴ありがとうございました」
早坂・大畑Lab.さん、ありがとうございました。建設現場だけでなく、すべての労働災害がなくなることを祈るのみです。一つでも多くの安全が確保されますように。とても大事な提案でした。
地域賞 石川高専「Mr.HHH」
続いて地域賞を受賞した石川高専のチーム「Mr.HHH」(ミスタートリプルエイチ)です。
タイトル
バンブーレスキュー~竹を用いた水道管の簡易復旧~
課題
「この提案の背景は2つあります」
1)放置竹林問題。
「竹は古くから日用品の素材として使用されていましたが、 経済成長や少子高齢化により放置竹林が増加しました。放置竹林の問題として、繁殖力が高いこと、根を浅く張ることが挙げられます」
2)地震によるライフラインの影響。
「とてもタイムリーな話題ですが、私たちの住む石川県では地震が多く発生していることから、 この問題について特に自分たちが考える必要があると考えました。そして、ライフラインの中でも電気、ガスは復旧が早いですが、水道は復旧に時間がかかり、 給水車ではまかないきれないことから水道に着目しました」
提案
「これらのことから、放置林問題を解決したい、災害時に早急に水道管を復旧したいということで、竹シートによる水道管の簡易復旧を目的としています」
竹シートの概要
「伝統工芸で使用されている竹網を参考にし、 竹特有の柔軟性と引っ張りに強い耐久性を生かし、破損した部分を外から覆い応急処置を行います。外から覆うことで 様々な破損に対応できると考えています」
竹シートの作り方
「高専の裏山から竹を採取して、それをノコギリで切って薄く削り、ソロハサミなどで同じ形に整え、それを編みます。
大体1シートあたり15分から20分ぐらいで作ることができます。これが竹シートです」
「隙間を埋めるためにボンドを使用しましたが、乾くのに時間がかかったため、 最終的にラップを採用しました」
このあと実証実験のプレゼンが入りました。
まとめ
「今回のポイントは一石二鳥です。竹シートにより水道管の簡易復旧と放置竹林の解消が見込まれます。
今後の課題といたしまして、より多くの、より大きな水圧にも耐えられるように竹シートを複数枚重ね合わせ、より大きな水圧にも耐えられるようにし、また、漏水量を減らすためにラップの代わりにモルタルや粘土を使うことが考えられます。 以上で発表終わります。ご清聴ありがとうございました」
Mr.HHHさん、ありがとうございました。放置竹林は日本全国で問題になっています。そして災害の府復旧対策もより迅速さが求められています。まさに一石二鳥の提案でした。
地域賞 沖縄高専「PUNITTO」
次のプレゼンターは地域賞を受賞した沖縄高専のチーム「PUNITTO」(プニット)です。
タイトル
まちの維持管理体験アプリ「オペメン」
課題
「現在、インフラは私たちの生活に欠かせないものですが、その重要性や維持管理の考え方については十分に理解されていません。町の魅力を引き出すために、維持管理の価値を市民自身が認識し、他人事ではなく自分事として維持管理に取り組むことが重要課題となっていきます。そこで私たちは、町に構成する建物群の維持管理に注目し、建物群の維持管理の 啓蒙と戦略が一度にできる欲張りなゲームオペメンを開発しました」
提案
「提案するオペメンというゲームは、何もしなければ劣化していく都市の建物に対して、 修繕と更新の2つの施策を駆使して老朽化を防ぎ、建物の維持管理に取り組むゲームです。ゲームのルールは簡単で、時間が進行すると建物の寿命が減り、最終的には建物が消滅して町の崩壊に直面します。 そこで、町が崩壊しないように建物に修繕と更新の2つのアイテム(弾)球を打ち込んでライフを回復させます」
今回は沖縄の国際通りを使用したのとのこと。
建物の寿命がライフとなっていて、建物に対して何も行わなければ消滅していきます。そこで修繕と更新の2種類の弾を建物に打ち込むことでライフの回復を図ります。 この修繕と更新をうまく使い分けることが、建物の長寿命化を実現するポイントです。
「任意の時間、つまり一定の年数が経過するとゲームが終了し、結果画面が表示されます。ゲームを楽しむことだけではなく、こうやって結果画面が表示され、評価ランクが確認できるなど、色々なものが表示されます。
まとめ
「このゲームが提供する効果は3つあります」
1)建物の価や維持管理の重要性を学べる。
「プレイヤーの行動で建物に与える影響や効果を3Ⅾの中で表現し、視覚的に大変体験できるために提供されます」。
2)建物のLCRCの考え方がゲームを通して自然に学べて見つけられる。
「維持管理の重要性を伝えていくだけではなく、実際に建物の長寿命化を目指すことに具体的に何をすれば良いのかという視点から、ゲームはプレイヤーが 任意の時間において修繕と更新の2つの施策を駆使し、建物の LCRCの考え方がゲームを通して身につけられます」
3)ゲームで得た経験が現実の建物にもすぐに適用できる。
「本ゲームは、全国の都市に現状に近い状態で都市の建物の維持管理を考えることができる汎用性の高いシステムとして活用し開発しました。現実に近い3Ⅾ都市オープンデータを利用しているため、この効果が提供できます。 これにより、現実の世界をバーチャルの世界で実現するデジタルツーを構築し、 ゲームの攻略のために考えた維持管理の戦略が実際の社会でも役立てられるのではないかと考えています。以上で終わります。ご清聴ありがとうございます」PUNITTOさん、ありがとうございました。
遊びながら都市の維持管理が学べるって良いアイデアですね。都市の維持管理って、私たちが暮らしてきた街を守るために
とっても重要なことですね。
後編に続く