こんにちは。今回は千葉県で行われた竹林整備のボランティア活動を取材してきました。
この活動の主催者は『NPO法人竹もりの里』です。
この団体は、竹を上手に利用して社会起業(さまざまな社会問題への取り組みを事業として起ち上げること)を試みている組織です。
なぜ「竹」にスポットを当てて取り組むのでしょうか?
実は今、里山をはじめとして日本各地で竹が猛威を奮っているのです。
あなたの街でも竹林を見たことはあるでしょう。竹は日本に広く分布していて、どこにでも生息していますね。なかでも美しい竹林は観光名所になっているところもあります。
また、食器やカゴ、バッグ、道具など昔から竹で作った工芸品も作られており、伝統的な日本の住宅にも建築用資材として竹が使われてきました。このように竹は私たちの生活に馴染みのある植物です。
そんな私たちの暮らしに馴染みのある竹ですが、現代では私たちの生活のスタイルが変わってしまって竹製品を使わなくなってきました。これまで使用していた竹製品は、プラスチックなどの代替製品や、安価な価な輸入竹製品の増加、また、生産者の高齢化などにより、高価な工芸品を除いては、日常で竹製品を見かけることが少なくなってしまいました。
このまま放置され続けると、主に次のような問題が引き起こされると心配されています。
1、樹木林への侵入から地滑り災害要因
2,生物多様性の減少
3,里山の竹が河川から海へ流れ漁業被害
などなど。
どうしてこのような問題が起きるのでしょうか。
竹は繁殖力が強くてニョキニョキとすぐ育つことが特徴です。
竹はタケノコから3ヶ月で若竹へと成長し、地下茎(根っこ)も最大で年に5メートルから8メートルも伸びます。常緑で倒れにくく、垂直にぐんぐんと伸びる竹は、生命力を象徴するおめでたい植物のひとつとされ、お正月に飾る門松にも使われています。
このように竹は驚異的な成長速度で縦にも横にもよく伸びるため、密集して成長すると森林に太陽が当たらなくなり、他の樹木が育たなくなります。
こうして先ほど紹介したような問題がおき、根の浅い竹は土砂崩れなどのリスクが発生するのだそう。
人里に近い放置された竹林がイノシシなど野生動物の住処になると、畑が荒らされてしまいます。
使われない竹林は管理不足で周囲の森林や里山へと侵食し、さらに整備をする担い手も高齢化。荒れた竹林は、「竹害」とも呼ばれるほど邪魔者扱いされるようになってしまいました。
とても大変なことです。でも、整備をするのは重労働なので、放置されている竹林はどんどん増えていきます。竹害も減りません。
そんな放置された竹を有効活用して、竹害を少しでも解決していこうとしている団体がNPO法人竹もりの里なのです。
竹林整備
竹林整備はそんな活動のひとつになります。
開催は毎月第3土曜日。
場所は千葉県内各所ですが、現在は熊野(ゆや)の清水周辺の竹の整備を行っています。
熊野の清水は弘法大師が湧き出させたという伝説が残る湧水がある観光名所。環境省が選定する名水百選にも選ばれている採水地です。
この日は熊野の清水の駐車場が集合場所になります。
朝9時すぎ、ボランティアの人たちが集まって作業開始です。
服装は基本的に土木や農業の作業着。みなさん長靴や汚れても良い服装に着替えて集合します。
腰に作業用のバッグをぶら下げている常連さんもいます。
参加者は千葉県在住者が中心ですが、他県の人も来ています。
SDGs活動に関心のある大学生やボランティア活動に熱心な人、自然環境問題に関心がある人、労働作業で良い汗をかきに来る人、山の作業や道具が好きな人など、動機も年齢もさまざまです。
この日はいませんでしたが、親子連れも大歓迎です。
では作業開始です。
今日の作業は道路沿いの林に入って、竹を道路に引っ張り出して撤去します。
写真で見ていきましょう。
竹林
竹林はうっそうとしています。この森はもともと雑木林。そこに竹が侵食してこのようになりました。
中に入ると腐った竹が重なっています。想像より腐った竹は多いです。
NPO法人竹もりの里理事長・鹿嶋與一さんのお話
「今日はこの場所の竹林整備の取っ掛かりです。まずは道路沿いからきれいにします。このまま放っておくと雑木林としての機能しないんです。光を遮るから土に日光が当たらない。植物が育たず腐るんです」
竹の切り出し
足場が悪いので腐った竹はどんどん道路沿いに運び出します。大きい竹は運びやすくするため、電動のこぎりなどで切り分けます。作業はその人の経験値や体力などで持ち場が振り分けられるので初心者や子どもでも安心して作業できます。経験者の指導もあります。
若い竹は伐採せず、タケノコ狩りのために残しておきます。ちなみに若い竹の見分け方は節が白いのだそうです。
竹は成長すると節が黒っぽくなります。下の写真は2本共節が白く、若い竹なので残していきます。
運び出し
枯れて横たわっていた竹、切り出した竹を道路わきに運び出します。
運搬
道路わきに運び出された竹はトラックに積み、竹もりの里に運んで粉砕し、土壌改良材にしたり、竹炭にしたりと再利用されます。
昼食
昼食は作業場で作った食事がふるまわれます。
この日はカレー。お釜と薪で炊いた白飯、地元産のレンコン。贅沢なアウトドア料理です。
お皿はさきほど伐採した竹をこの場で切って作ったもの。早速の再利用です・
働いた後の食事は格別、屋外で食べるのもおいしい演出。しかもワイルド。
とても心に残るランチタイムでした。
食後のデザートのスイカもいただきました。
ちょっとヘンテコな形が笑いを誘っていましたが、とっても甘いスイカでした。
チェーンソーで切る人、ノコギリで細い枝を切っていく人、切り出した竹をまとめる人、伐採した竹を道路わきまで運ぶ人、雑然と積まれた道路沿いの竹をトラックに積む人、空き地に移動させる人、竹ホウキで道路を掃く人、などなど体力がいる仕事から軽作業まで、老若男女の体力、技術に合わせて配置についてみなさん連携を取って作業を進めます。作業に初体験の学生も指導を受けてしっかり機能していました。
子どもが参加しても、ちゃんと適材適所のお仕事が用意されるので、大人と一緒に良い汗がかけます。
実はここの竹林整備、国や県、市などの行政からまったくお金が出ていません。心ある有志たちの手で続けられているのです。今回のこの場所は山の所有者に許可を得て作業が始まりました。
「計画では来年12月ぐらいまでには綺麗にします。トラックで運んだ竹は炭にしたりして、少しでも収益化を図ります。竹林整備は大事なことなんですけど、お金にならない(笑)。少しでも収益化してトラックの燃料代ぐらいにはしないとね」と鹿嶋さん。
日本中どこにでもある放置竹林を鹿嶋さんは心配しています。
「放置竹林の問題はとても深刻です。それなのに全国でこうした問題のほとんどがボランティアの手で対応しているのが現状です。竹林整備は国、県の補助を受けて活動する場合もありますが竹は収益を生まないからどこも余裕がないんです」
全国の人に、放置竹林問題のこと、それに対応するボランティアの存在や現状を知ってもらえれば、ボランティア活動が活発になり、市民の声が大きくなれば、行政が動くことも夢じゃないと鹿嶋さんは信じています。
「私たちの活動が収益化して、活動のひとつの成功例としてしめせれば全国に広がりやすいんじゃないかと頑張っています。もう少しこの問題の解決が早いというか。そんな難しいことを考えずに楽しく作業していい汗をかいて、みんなで同じ釜の飯を食えば、心身ともにスッキリできますよ」
作業終了
午後3時。今日の作業は終わりです。お疲れさまでした。
一時は道端に広がっていた切り出した竹もすっかりかたづきました。
竹林もとってもきれいになりました。
整備前
整備後
この山が今後どのような姿に変わるのか、とても楽しみです。
皆さんも関心があったらボランティアに参加してみませんか。
竹もりの里では竹林整備をはじめ、竹の工芸品制作の各種ワークショップの開催、さらに竹炭、竹パウダーなどの販売も行っています。
ぜひチェックしてみてください。
竹林整備は終わった後、気持ちがいいですよ~!
公式ホーム
NPO法人竹もりの里 | 千葉県房総半島の放置竹林をなんとかしようと思っているのですが・・・ (takemori.org)
またレポートします。