こんにちは。前回紹介した『全国子ども熱源サミット』の後編、グループワーク編です。
『全国子ども熱源サミット』とは、マニアックな人やオタクの人、好奇心旺盛の人、問題意識の高い人など、どんな人でも誰にも負けない熱量で海に関わることに取り組んでいる小学生が集まる全国大会です。
取材したこの日のプログラムは「熱源ジュニア熱中授業」。午前と午後の1日かけて行われます。
「熱源ジュニア熱中授業」は、大きく分けて4つの時間割があります。
1部は「世界の海から多様性を学ぶ」。日本を中心に海外にも中継を繋げて全10か所から現地レポートを行い、海の現状を学びます。
2部は「活動・取り組みを通して未来の海を考える」。5グループに分かれてのグループワークです。
3部は「グループ発表と意見交換」。グループごとにワーキングの成果を発表し、未来の海と自分たちについての意見交換を行います。
4部は「全体のまとめ」。子どもたちへのインタビューと総評です。
「人は海とともにある」を考えよう
前回は1部「世界の海から多様性を学ぶ」。というテーマで、中継リレーの様子をレポートしました。
今回は2部のグループワークからレポートします。
このグループワークは、「活動・取り組みを通して未来の海を考える」。
これまで参加者たちが海に関わるコトやモノに夢中、熱中、没頭していること、活動や取り組みを通して、未来の海を守るためにできることをみんなで考えます。
A~Eの5グループに分かれて、オブザーバーのみなさんにアドバイスをもらいながら意見をまとめていきます。
進行役の教育学者・田口康大さんから課題と進め方のアナウンスがありました。
グループワークの大きなテーマは「人は海とともにある」。
さらにA~Eの5グループそれぞれにグループテーマが与えられます。
グループテーマからの視点で「人は海とともにある」というテーマをどのように達成できるのかを考える、というとてもユニークな趣向です。
「人は海とともにあるために自分たちに何ができるのか、さらには社会にどういうことが必要なのか、それを提案してもらいたい、どんどん自由なアイデアを出してもたい」と田口さん。
各グループにiPadが配られ、ここに考えをまとめます。
発表の仕方もお任せです。4人それぞれが発表しても良いし、一人が代表で3人がサポートでも良いとのこと。
とても自由なスタイルですが、課題がシンプルなだけにどうやって進めれば良いか難しいでしょう。
田口さんは訴えます。
「それでも、そこに向き合って考えること、思い描くことってとても大事なことです。みんなで話し合ってください」
さらに進めるヒントも。
中継前に次の3つの視点でメモをとりましょうという案内がありました。
1)疑問に思ったこと。
2)みんなで考えたいこと。
3)自分だったらこうするかもしれないこと。
「ここでメモしたことが考えをまとめるヒントになります」と田口さん。
なるほど、無駄のない、よく考えられたプログラムですね。
面白そう!!
さて、海好きが集まった全国大会だけど、さすがにシンプルなテーマはとっかかりが難しそう。
最初はどこから手を付けたら良いか、とまどうグループもありましたが、やっぱり海を愛する人たち、すぐに手掛かりを探るようにゆっくりと自分の考えをみんなに伝えたり、疑問を問いかけたり、ひらめいたことを口に出したり、意見交換が進んでいきました。
しばらくするとあるグループが会場内にある展示(参加者の研究発表)に行き、資料画像として使用するために撮影を始めたり、物を持ってきたり、あるグループではたくさん書いたメモを手掛かりに議論が活発になったり、だんだんと賑やかになってきました。
そして考えもまとまり、グループ別に発表会が始まります。
大人が感心するほどの発表内容が続々
最初の発表はAグループです。
このグループテーマは「魚から見える海の環境」です。
「突然ですが、ここでクイズを出します」と意表を突く演出。
「シイラの雄雌の違いは何でしょう?
1体の色
2おでこの大きさ
3ヒレの大きさ
正解は2です。
2問目、ウツボには第二の歯があるでしょうか
1ある
2ない
正解は1です。
太刀魚はエサを狙うとき立っています。その理由は?
1自分を強く見せたい
2相手から見えにくくするため
3相手を食べやすくなるから
正解は2です。
つかみはOK!
ここからが本題です。
こんな素敵な魚たちですが人間の身勝手な行動のせいで魚たちが困っています。
そのなかでゴーストフィッシングについて発表がありました。
ゴーストフィッシングとは海底に沈んだ漁具により、意図せず長期間に渡って魚介類が捕獲されること。幽霊漁業とも呼ばれています。
海に流れてしまった漁業用の網などの漁具(ゴーストギア)は年間50万トンから100万トンが流出しているというお話でした。
まとめです。
「人は海とともにあるために、魚と僕たちは同じかけがえのない大切な命です。今の状況、環境を見直していくこと。また、保全活動を積極的にしていくことが何よりも大切なことだと思います。今できることを自分たちで考え、周りの人をなるべく巻き込み、全力で活動していきましょう」とむずびました。
展示物を利用して、よくまとまった発表でした。
次はBグループ。
グループテーマは「生き物と環境のかかわり」です。
「海のゴミ、温暖化、酸性化などは人間がやったことです。なので、この問題はすべて人間が解決しないといけないと思います」
そこで僕たちが考えたのは
1海のボードゲームを作り、興味を持ってもらう
2毎日ゴミ拾いをして地球を守る
3ビーチクリーン、生物観察、生物研究、サンゴの保全活動
4毎月地域の運動、ボランティア活動を頑張る
メンバーそれぞれの想い、考えを発表しました。
ちなみに海のボードゲーム。すでに完成していて、実は休憩時間に参加者の子どもたちやオブザーバーの先生たちで大盛り上がりしていました。完成度は凄く高いです。
次はCグループ。
グループテーマは「海の未来を予習する」です。
「私たちは、これからできることを考えました」
1ゴミが増え続けると、魚も人間も地球に住めなくなってしまうので、ごみを少しでも多く拾うことが大切
2海の汚れをなくすために干潟と、そこにいる生物を守ることが大切だと思います
3僕は環境の変化を少しでも止めるために人間が海に手を加えすぎないことが大切だと思います
「人間がどこまで自然に手を加えるか、最終的に話し合いました」
ゴミを拾うなど環境が良くなることをするのはもちろん良いけど、海や川が汚いからといって地面をコンクリートで埋め立てるなど、さらに環境が悪くなることはしてはいけないことだと思います。
大人でも難しい問題をちゃんと向き合って、話し合って発表してくれました。
人間って、どこまで自然に手を加えてよいのでしょうか?
読者のみんなにも考えてもらいたいテーマです。
次はDグループ。
グループテーマは「海を知るとわかる海の安全」です。
冒頭で「安全とは海の生き物、人間 どちらも豊かに暮らせるとことを定義します」と発表。
続いて、海とともにある、ということは
「ずっと海と人間が密接に関係しているこどたと考えました。現状では人間の勝手で海を傷つけています。ポイ捨てなどが例に挙げられます。また魚がゴミを食べたりすることで、人間が魚を食べられなくなるという悪影響が帰ってきます」
と見事な展開で進めます。
「人間にとっても海にとっても良い場所にするために、人間は海を守り、海は恵みを与える存在になる必要があります」
海と人間の関係性の説明が秀逸です。なるほど。
「そのために掲示物を使うこと。知ってもらうことが大切だと考えます。そして、知ったことを行動に移すために海を好きなってもらう必要があると思います」
たとえば海水浴や釣り、レジャーなど、海と触れ合う機会が多くなることで、海を好きになり、守りたいという気持ちが湧いてくるはず。
その気持ちはゴミを拾う、持ち帰るという、小さな行動につながると訴えます。
たしかに海との触れ合いが増えれば、海を守りたいという気持ちは強くなるはず。良い視点ですね。
最後はEグループ。
グループテーマは「アイデアで社会を変える」です。
「今の社会において、全国各地の環境が違うと思ったので、社会の動かし方をそれぞれに考えるべきだと私たちは考えました」
「次に僕たちはたくさんの人に働きかけるには、ということを考えました。そこで出た意見が3.5%ルールです」
それを世界の人口で置き換えたり、国の人口で置き換えたり、具体的な数字を挙げます。
70億人なら2450万人、1億人なら350万人です
「これだけの数が行動すれば世界が動きます。でも国によって人口が違います。バチカンは700人です。なので、人口の多い中国に多くを割り振ると効率が良いと考えました」
たしかに人口の多い国の3.5%が賛同してもらうと大きく発展しやすそうです。
「次にインターネットの活用です。インターネットを利用している人たちとのつながりを活用すると良いと思いました。ちなみに私はゴミ拾いアプリを利用しています」
このほか、アニメやゲームなどと関連付けることで、関心を広めたいと結びました。
今日聞いたこと、インプットを早速アウトプットした機転の利いた構成でした。
発表会は以上です。
このあとは参加者のみんなとオブザーバーみなさんを交えて「まとめ」の意見交換が行われました。
レポートをまとめる舞台裏、日頃から思っていること、発想のきっかけなどなど、さまざまなお話がでて、観客の人も海について考える良い機会になりました。
みんな、集中力が切れずに最後まで元気に活発に参加していました。
最後は全員の感想コメントもありました。
お疲れさまでした~!
最後に主催者である日本財団の常任理事・海野光行さんにお話を聞きました。
─参加した子供たちにどのような印象を持ちましたか?
「最初は緊張をしていて、どうなるのかなと思ったんですけれども、みんな(海に関して)誇りがあるんでしょうね。きっちりとやり上げてくれました。おそらくこれからの日本の海、世界の海をリードする存在になっていくんじゃないか。 そんな期待を持たせてくれた子供たちです」
─このサミットの感想はいかがでしょうか。
「感想というか、手応えと言いますか、このプロジェクトの成果は何かと問われた場合には、私の答えはあの子供たちです。ということしかありません。1番期待しているのは、この子供たちがそれぞれ地元に帰って、自分の持っている力、ここで得た知見を元にどうやって周りを巻き込んで、どういう活動をするのか。それこそがこのプロジェクトの成果だと思っています」
看板に偽りなし!
とっても熱い気持ちになるイベントでした。
そして、今日1日の出来事をまとめた「グラレコ(グラフィックレコーディング)」を添付いたします。
とてもよく描かれていますよ!
熱源プロジェクトのホームページはこちらをクリック
https://umi-kaido.com/
またレポートします。
おわり