SDGs 取り組んでいます!

マネキンからSDGsを教えてもらえるってよ!

突然ですが、マネキンに記念日があることを知っていますか。

では、クイズです。マネキン記念日はいつでしょうか?

シンキングタイム♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

答えは! 3月24日です

なぜ3月24日なのでしょうか。

調べてみると1928(昭和3)年に東京・上野公園で開かれた「大礼記念国産振興東京博覧会」というイベントで、高島屋呉服店(現在の高島屋百貨店)が日本で初めて「マネキンガール」を登場させたのがこの日(3月24日)というのが由来だとか。ちなみにこの「マネキンガール」とは、当時は人形ではなく生身のモデル兼販売員の女性がマネキン役を担当していたそうです。

このマネキン記念日に合わせて、3月23日に「マネキンで見る社会課題の変遷」というラウンドテーブル(自由に意見交換を行う会議)が開催されました。

実はマネキンの世界って昔から環境問題に取り組んでいたとのこと。

それならSDGsガイド編集部としては見逃せません。

そこで、どのような取り組みをしていたのか勉強させてもらいにラウンドテーブルにお邪魔しました。

ラウンドテーブルを開催したのは株式会社トーマネです。

トーマネは日本人形の名工・永徳齋(えいとくさい)をルーツに1934(昭和9)年に創業したマネキン人形製作の老舗企業です。

トーマネの社屋に入ってビックリ! どうやら社内は自由で活発な面々が多い様子!?(笑)

 

ではトーマネさんによるラウンドテーブル開始!

教えてくれる人は、トーマネ 社長室 室長・岩下沢子さんです。

プレゼンテーションする岩下沢子さん

 

最初のテーマは「FRP(強化プラスチック)マネキンと環境問題」

FRP(強化プラスチック)とは1958(昭和33)に開発された素材です。軽くて強くて、熱による変形もなく、修理も可能。さらに着色も自由にできるという特徴があり、建物や乗り物、住宅の内外装など多方面で使われています。マネキン人形の素材としても最適で誕生以来、60年以上たった今でもFRP性マネキンは各所で活用されています。

FRPについての解説

 

左端がFRP性マネキン

 

プラスチックは「処分しにくいもの」として環境問題でよく話題に取り上げられますね。

ここでマネキン業界のSDGsポイント①です。

日本のマネキンは、世界で唯一のレンタルシステムを採用しています。

マネキンをレンタルで貸し出して、入れ替えるごとにメンテナンス(お手入れ)や塗装替えを行います。

レンタルを終了したマネキンは、回収してメンテナンスを行い、次の出番を待ちます。

処分、廃棄することはありません。

この環境問題に配慮したシステムが60年以上も前から続けられてきたのです。すごいですね。

レンタルする側にとってもメリットが多いシステムです。マネキンを購入することなく、保管場所やメンテナンスも必要ありません。

使いたい時に借りれば良いのです。

ちなみに、なぜ世界中で日本だけがレンタルシステムを採用しているのでしょうか。

それは日本の四季が影響しているのでは、と考えられています。

四季があることでマネキンの服の着せ替えが多いため、何度もディスプレイの入れ替えをします。そうなるとレンタルの方がとても便利ということで広まったようです。

さて、そんなFRP性マネキンですが、いくらメンテナンスやレンタルを繰り返していても、いずれは劣化します。そうなると処分しなければいけません。

ここでマネキン業界のSDGsポイント②です。

実は現状のFRP性マネキンは100%リサイクルされています。

寿命を迎えたマネキンは、破砕処理をします。

そして鉄などはマテリアルリサイクル。

ガラスクロスなどは燃料や、セメントなどの材料へ。

こうして生まれ変わります。

マテリアルリサイクルについての解説

 

このようにFRPは100%リサイクルが可能な製品。

採色に適した素材で大型造形や美しい色合いで、さまざまなシーンで「楽しいステージ」を演出することを期待されています。

こんな鮮やかな表現ができます

 

次のテーマは「和紙マネキンWaltzと脱プラスチック」です

この度、トーマネでは和紙製のマネキンを開発したそうです。

和紙マネキンWaltz

 

ここでマネキン業界(トーマネ限定)のSDGsポイント③です。

FRP性マネキンはレンタル商品、100%リサイクルと、環境に配慮していることはもちろんですが、

その一方でトーマネでは物つくり企業として「見たことないもの」をテーマに商品開発を行ってきました。

そして、SDGsに添った製品として開発されたのが和紙性マネキンだったのです。

会場に飾られた和紙マネキンWaltz

 

和紙は茨城県常陸大宮市で350年続いている無形文化財「西ノ内和紙」を使用しています。

トーマネが長く工場と物流倉庫を構えている茨城県への地域貢献という一面もありますが、

西ノ内和紙は繊維が長くて、マネキン開発に必要な強度を持っていることが採用の一番の理由です。

和紙でマネキンを作るって、みなさんはどんなイメージを持ちますか?

実は企画するのは簡単ですが、実現するのはとても難しかったのです。

1)今までのマネキンとまったく違う素材なので、和紙の特製を生かし組み立て方や立たせ方を研究することから始まりました。

2)次に紙を貼るという技術は民芸品などですでにありますが、マネキンはファッション界で活躍するもの。ファッションの世界で通用する表現に仕上げないといけません。つまりただ作ればよいのではなく、お洒落に仕上げないと商品として成立しないのです。そこが難しいところですね。

3)成形には独自で配合した接着剤を使用していますが、原料の組み合わせやその割合を決めるのに検証実験を何千回と繰り返しています。製品化した現在でもより良い配合を求めて試験検査が行われています。

4)使用に耐えられる強度は実現しましたが、和紙は呼吸しますので、そこから起こる湿度や強度変化をいかに抑えるか。今もその課題に取り組んでいます。

左が開発初期、右が開発後期

 

こうして開発された和紙マネキンWaltz。

ここでマネキン業界(トーマネ限定)のSDGsポイント④です。

和紙の原料の「楮」(こうぞ)は1年で成長し、成長が早く連作障害(似たもの植物を同じ場所で繰り返し栽培することにより,次第に生育不良となること)がないため、同じ株で収穫が可能となり、環境への負担が少ない。

  • 製造過程で有機溶剤を使用しない
  • 研摩による粉塵がでない。
  • 成形で使った和紙は再び和紙に戻すことができ、再利用が可能。

 

さらに和紙マネキンWaltzは、次のような特徴も持ち味です。

・従来品(FRP性)の約20%の軽量化

・和紙独自の表情の実現

軽量化はなんとマネキン一体8キロ程度が1.6キロになりました! これにより運搬がかなり楽になったようです。

最後の「表情」には実物を見るとよくわかりました。反射する光の屈折が従来と異なるというのでしょうか。照明の光を柔らかく拾って優しく自らの存在を発信します。

誕生したばかりの和紙マネキンWaltz。これから全国各地で活躍が期待されていますが、すでに東京・日本橋の高島屋百貨店のデビューしており、その造形美を鑑賞することができます。興味のある人は訪ねてみてください。

最後のテーマは「HEARTFULとジェンダーレス」です

トーマネのマネキンシリーズの「KEREN」(技術力や発想力など、すべてが最先端の開発商品ブランド)から派生したペアマネキン「Heartful」についてのお話です。

マネキン業界(トーマネ限定)のSDGsポイント⑤です。

時代背景を映し出したマネキン製作を心がけていたトーマネは、さまざまな人とのつながりの形や、心の温まる表現を模索した結果、温かい関係性を感じさせるマネキンとしてジェンダーレスの「Heartful」を開発しました。

上から紳士型、婦人型、一番下が紳士&婦人型と婦人&犬型。さまざまなポーズで表現豊かな「HEARTFUL」

 

「Heartful」の最大の特徴はペア仕様のこと。マネキン業界ではシングル1体が基本ですが、この「Heartful」シリーズはあえてペア仕様となり、シングル利用はできません。

「今後はさまざまな優しい関係性を表現したいと考えている企業やジェンダーレスの製品を扱っている企業に使用してもらいたい」と岩下さん。

分かりやすく説明してくれた岩下さん

 

こちらもすでにデビューしており日本橋三越百貨店で紳士型のペアと婦人型のペアが展示されていました。

現在、展示は終了しましたが、どこかでまた見られるはず。ペアのマネキンって、ぜひ見てみたいですね。

マネキンの社会勉強はこれにて終了です。

これまで何気なく見かけていたマネキンのこと。

聞いてみると、興味深いお話ばかり、「へ~!」の連続です。

こんなにマネキンとSDGsって関りがあったとは、とっても勉強になりました。

トーマネのみなさん、ありがとうございました。

またレポートします。

おわり