アフリカ・ザンビアのオーガニックバナナの茎から繊維を取り出し、
人や環境、地球に優しい“エコな紙”を作り上げる!
「ミヤザワ株式会社」の専務取締役 宮澤雅宏さんに、
“社会循環型”の紙素材『バナナペーパー』について、お話を伺いました!
私たちが普段から使っている“紙”が、どこからやってきて、どんな人たちが作っているのか、考えたことはありますか?
1950年に開業した学校文具用品メーカー『ミヤザワ株式会社』では、2012年8月から、アフリカ・ザンビアで廃棄されているオーガニックバナナの茎を再利用した「バナナペーパー」を製造。この「バナナペーパー」は、学校や教育機関で使われる卒業証書や証書ケースになるほか、招待状や冊子、パンフレットやポストカード、年賀状といったさまざまな紙製品に生まれ変わります。
今回、そんな「バナナペーパー」の製造工場を案内してくださったのが、『ミヤザワ株式会社』専務取締役の宮澤雅宏さんです。「バナナペーパーは、ザンビアのオーガニックのバナナ農園で廃棄される茎から繊維を取り除いて、木材パルプと混ぜて作っています。その木材が『森林認証』と呼ばれる、人権や労働、環境面に配慮したパルプなんです」と説明してくださった宮澤さん。
日本で初めてフェアトレードの認定を受けた「バナナペーパー」は、貧困問題に苦しむザンビアでの雇用を生み出すだけでなく、日本でバナナペーパーを購入してもらうことで、ザンビアの子供たちが学校に入学するための資金に繋がっているといいます。つまり、日本の学生が「バナナペーパー」の卒業証書で卒業することによって、ザンビアの子供たちに質の高い教育の機会を与えることができるんです。
「バナナが、どうやって紙に変身するの?」 今回、興味津々の様子で取材にやってきたのは、子ども記者のかいとくんとあきらちゃん。「バナナペーパー」を製造する児玉工場を見学し、『ミヤザワ株式会社』の活動を覗き見してきました!
誰が作ったのかが見える“エシカル”な紙製品
――どうやってバナナから紙を作っているんですか?
宮澤:乾燥させたバナナの茎をアフリカのザンビアから日本にフェアトレードで輸入します。作り方は2種類あるのですが、繊維をパルプ化し、グツグツ煮て、柔らかくして紙のパルプと混ぜて作る方法と、厚い紙を粉砕して細かく混ぜ込む方法です。紙の種類によって、作り方が違うんです。
――「バナナペーパー」を作ることで、どんな良いことがあるんですか?
宮澤:アフリカのザンビアという小さい地域では、実際に20人くらいを雇用して、1人の生活で10人を支えるくらいの労働収入があるんです。なので、1つは、貧困問題を解決するための雇用を創出できることです。雇用ができることによって、子供たちが学校に通えるようになります。
もう1つは、現地の人が貧困によって密漁や違法森林伐採をしないようになります。よって、野生生物の絶滅防止にも繋がり、地球のさまざまな問題を解決できる、そういった“人や環境に優しいもの”がバナナペーパーです。紙って、誰が作っているのかわからないと思いますが、『誰が作ったかが全部見える』というのがバナナペーパーと普通の紙との一番大きな違いだと思います。
自分たちが使うことで誰かのためになる循環を
――バナナペーパーを作って、驚いたことはありましたか?
宮澤:私も“三現主義”を持っているので、“現場”に行って“現物”を見て“現実”を知らないと思って、2013年8月にアフリカのザンビアに行ってきたんです。バナナの茎の繊維をとる仕事を初めて体験して、繊維をとる大変さや、実際に向こうの人たちの生活を見て、本当に子供たちがなかなか学校に通えていないことがわかりました。
そのとき、私たちはガイドの人からもらったリンゴを齧って食べていたのですが、残った芯を持っていたら、村にいた女の子が「それ、食べないの?」と聞いてきて、そのリンゴの芯を食べて、次の子にも渡したんです。自分1人で食べるのではなく、ちょっと齧ってみんなに渡していく。その光景が衝撃的でした。
――実際に使った人からは、どんな感想をもらっていますか?
宮澤:バナナペーパーを使ってもらって、「普通の紙よりも温かみを感じる」と言っていただくことが多かったです。「自分たちが使うことで誰かのためになるという点でも、人と動物、地球のためということがはっきりしているので、SDGsに簡単に取り組める」ということが一番言われていますね。
SDGsを実現するためには、大勢の力が必要になる
――これから目指していることはありますか?
宮澤: 2012年8月に始めた当初は、「バナナペーパーで卒業する子供たちを増やすこと」が一番の目標だったんです。卒業証書をバナナペーパーに切り替えて、子供たちがバナナペーパーを通して、貧困があることを知ってもらって、向こうのアフリカの人たちが入学できるような仕組みを考えていたのですが、なかなか学校には国の予算があるので、切り替えてもらうことができない。でも夢は諦めていないので、少しでも多く、バナナペーパーに切り替えてもらえるように、一生懸命頑張りたいと思っています。
――今の社会に向けて、伝えたいことはありますか?
宮澤:今、僕らがいる地球が、まず健康じゃないといけないと思います。地球が健康でなければ、僕らは健康ではいられないし、自分が健康じゃないとお金も稼げないし、生活をしていけない。自分の健康が第一で、家族、地球の健康が大事ということを知ってもらって、将来、子どもたちが大人になったときに、その優しい気持ちを持ってほしいなと思います。
さらに今は、水も空気もタダじゃないと思うんです。水は水道代を払って、下水道処理も払っていますし、空気に対してもお金を払うような時代になってきている。それくらい大変になっていることを感じなくてはいけないし、世界で起きているいろいろな社会問題、貧困問題や格差、環境問題も、必ずビジネスを通して少しでも正せることがあると思うんですよね。それを企業や経営者の方や、スタッフの人も、ちゃんと考えて会社勤めをしてほしいなと思います。
アフリカのことわざで、「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」という言葉があるんです。1人だったら、今日でも判断してパッと行けますけど、遠くに大きくグッと動こうとすると、大勢の力が必要です。今のSDGsはまさしくそれで、みんなで大きく動くために、そういった企業さん、個人の方が増えてくれれば、世界は変わるんじゃないかなと思っています。
アフリカの子供たちが学校に通える環境を作るため、バナナペーパーで卒業する日本の学生を増やそうと奮闘している宮澤さん。子ども記者のあきらちゃんとかいとくんは、さまざまな紙製品に形を変える工場を見学しながら、「すごい!」「面白い!」と楽しくSDGsを学んでいました。普段から使っている紙をバナナペーパーに変えて、人や動物、地球のために、まずできる一歩から始めてみませんか?
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