SDGsに取り組む世界の子どもたち

シンガポール/緑をきっかけに持続可能な社会のため活動する子どもたち

シンガポールに住むヴァレン・ウンさんは、ガーデニングを楽しんでいます。

2m×1mの狭いベランダですが彼は毎日何時間もかけて、枯葉や食べ残しのブロッコリーを切り刻んで肥料を作ったり、くぼんだ土に種を植たり、唐辛子、ゴーヤ、カンゾウ、トマトの苗を剪定したりしています。

12歳のヴァレン・ウンさんは、2年前に先生からインゲン豆の苗をもらって自宅で育てたのがきっかけで、ガーデニングに目覚めました。

 

「僕は外に買いに行かなくても食べられる植物を育てるようにしています」

これは彼が家族のために節約し、また包装のゴミを減らすために行っている方法のひとつです。

食材を買いに行くときはマイ容器を持って行くよう、両親に伝えています。レシートは箱に入れて保管し、しおりとして使っています。

「彼は まるでカラン・グニ男*のようです」

と母親のクアン・シュア・シーさんは笑顔で語ります。

*カラン・グニ男⇨シンガポールの言葉で、家に不要になったもの、新聞、電気製品などを引き取ってリサイクルする人のこと。

ヴァレンくんはレシートを保管して、しおりとして使っています。

5年前にリアンフア小学校に転任してきた教師のクアンさんがきっかけでヴァレンさんが自然に興味を持つようになりました。

同校のシチズンシップ・キャラクター教育部門では、フードコンポスト、ガーデニング、海洋保護ワークショップなど、環境を重視した活動を頻繁に開催していました。クアン先生はヴァレンさんを連れて、土を耕したり海岸でゴミを拾ったりしていました。

そして、そこで学んだアイデアをヴァレンさんは家に持ち帰るのです。ヴァレンさんは台所にリサイクルコーナーを作り、使用済みの飲み物のボトルや段ボールをラックにしました。

 

ヴァレンさんは小学校4年生のとき、教師からインゲン豆の苗を渡されそれを家で大切に育て、家族で”ミニ収穫”を行いました。

 

大きくなったら何になりたいかという質問をされたときヴァレンさんは”庭師になりたい”と元気に答えました。ヴァレンさんの母親クアンさんは庭師は将来性のある分野だと考えていますし、注意欠如・多動症(ADHD)を持つヴァレンさんは、ガーデニングをすることで気持ちが落ち着くようになったそうです。

「環境問題が深刻化する中、クリーンでグリーンな環境をつくるために、彼らは私たちの未来であり、希望なのです」

と、クアンさんは息子の新たな情熱を後押ししています。

ヴァレンさんが育てたトウモロコシと唐辛子は、“私たちの胃袋の中”とクアンさんは嬉しそうに話してくれました。

若者は環境問題に関心が高いと思われていますが、少なくとも家庭においては、より環境に配慮したライフスタイルを採用するよう、大人たちがリードしているようです。

YouGov社のオムニバス調査によると、回答者の56%が、家庭でエコなライフスタイルを推奨しているのは自分であると回答しています。また、22%の人が「パートナー」と答えています。

5歳から17歳の子供がいる世帯のシンガポール人254人を対象にした結果によると”物事の主導権を握っているのは自分の子供だ”と答えたのはわずか8%だったそうです。

しかし、この数字が、子どもたちが大人に与える影響力を弱めることはないと、環境保護活動家のショーン・ラム博士は言います。

また、YouGovの結果は、ほとんどの若者が環境に関心を持っていることを示しました。18歳未満の子供に環境に配慮したライフスタイルがどの程度重要かを尋ねたところ、89%が「非常に重要」または「やや重要」と答えました。

ヴァレンさんの同級生、テー・スー・シヨンレイ・ヌウェイさん(家族や友人からはエダと呼ばれています)、環境に配慮した家庭で育ったそうです。野菜や果物を植えたり、古着で布を作ったり、休みの日には罠やゴミに引っかかってしまった動物たちを救っています。

最近では、電気を消す、エアコンの温度を上げる、雑誌やペットボトルをリサイクルする、リユースバッグを持って出かけるなど、両親に注意喚起するのは12歳の彼女です。

 

「地球を守るための役割を果たさなければ、私たちは死んでしまいます。また、気候変動のために、多くの動物が生き残れなくなります。私は動物が大好きなので、そうなってほしくないと思っています”

と彼女は語ります。

 

「私たちはエダにもこの分野(持続可能性)を理解するよう勧めています」

父親のアウン・ミョー・フトゥンさんは言います。学校ではカリキュラムに持続可能性に関する授業を取り入れ、コンポストの習慣を教えてくれたことを嬉しく思っているそうです。一家は、野菜の皮や茶殻を肥料として使うようになりました。

 

また、マイシリ・パンディさんは、以前からリサイクルや持続可能な製品を使うことを意識していましたが、それをさらに推し進めるようになったのは、自分の子どもたちの存在があったからだと言います。

「外出するたびに、”リサイクルバッグは?””タッパーは持ってきた?”と言われます」

と3児の母であるマイシリさんは語ります。

 

ある日、末っ子で5歳のシャム君が学校から帰ってきて、”生ゴミを庭に埋めたい”と言いました。ちょうど幼稚園で生ゴミについての授業を受けていたこともあり、マイシリさんは彼のアイデアをサポートするためにコンポスト容器を2つ購入することにしました。

バブルティーを買うときに使う再利用可能のふくろとストローを見せるマイシリ・パンディさんの2人の子ども、5歳のシアンさん(左)と8歳の二キタさん(右)。

また、子供たちは保育園に行き、種を選んで植えることを楽しんでいます。マイシリさんは、

「今までは買っていた野菜を自分たちで作りたいと言い出したんです」

と言います。

タチアナ・シウフィさん一家は、時間があるときに近所でごみ拾い活動を行っています。あるとき、4歳のナタリーさんが、タバコを投げ捨てた男性に”地面に吸い殻を捨てるのはやめて、ゴミ箱に捨ててくれない?”と注意をしました。それはとても勇気のある言葉でした。

タチアナ・シウフィさん一家は、時間があるときは近所のゴミ拾いをしています。息子のラファエルさんはゴミ拾いの道具を使うのが楽しいと言います。

シティ・スプラウトのイベント担当者であるシウフィさんは子供ができたことがきっかけで、日常生活を見直すようになり、家庭でエコを実践しています。7歳になる息子のラファエルさんは、自然を愛し、地球を守ることを重視する幼稚園に通っていました。この幼稚園では、子どもたちにガーデニングやコンポストをさせ、3R(リデュース、リユース、リサイクル)の概念を理解させています。シウフィさんは、自分もそれに従わなければならないと感じたそうです。そして、ゴミゼロのお店で買い物をしたり、再利用できるものだけで誕生日会やお遊戯会を開いたり、充電式の電池を使うなど、家族でエコを実践しています。

クアンさんは、

「大人になると、つい便利さに流されてしまうんです。

子供たちにエコの習慣などを教えても、大人になってからは別の行動をしてしまいがち。知識があっても行動に移さないのは、正しいことではありません。環境に対する子どもたちの期待に傷をつけたくはありません。私たちが教えることを私たちも実践にしなければならないのです」

ソース:https://www.channelnewsasia.com/singapore/green-your-kids-environment-sustainable-future-471141