空気は人間を含む多くの生物にとって重要な資源です。米国森林局の科学者は、大気汚染が環境と人間の健康に与える影響、そしてその影響が地域によってどのように違うかを調査しています。
森林局パシフィック・ノースウエスト研究所の研究社会科学者であるモニカ・デリアンさんは、”どうすれば、若者が自分たちの社会における環境被害を有意義に調査・対処する機会を作れるか?”という問いを立てました。この問いに答えるため、デリアンさんは彼女の同僚である研究生態学者サラ・ジョバンさんや地元のリーダーたちと協力して、地域科学プロジェクトを立ち上げました。地元の青年団員は、ワシントン州シアトルの工業地帯に隣接する2つの地域で、重金属汚染が大気の質にどのような影響を与えているかを調査しました。
ワシントン州シアトルの学生たちは、汚染度の高い場所を特定するために、苔をスクリーニング・ツールとして使用しました。
森林局の科学者とデュワミッシュ川のコミュニティ連合の学生たちは、苔を少し変わった方法で観察しました。
ポートランドで行われた先行研究では、苔が汚染レベルの高い都市の場所を特定するスクリーニング・ツールとして使用できることが示されました。苔には根がないため、空気中の水分から栄養を吸収し、汚染も防ぎます。
空気汚染は、多くの学生にとって身近な問題です。8年生から12年生までの生徒の多くは有色人種で、大気汚染にさらされやすい工業地帯に近い都市部に住んでいます。
学生たちは過去の研究を参考に、街路樹に生える苔を採取し、それぞれのサンプルの場所を記録しました。そして、ミネソタ州グランドラピッズにある森林局の分析化学研究所に渡す前に、研究室に戻って各サンプルの重量を測定しました。
この研究所は、苔に関する高い分析技術と経験を持っています。科学者たちは、各サンプルに含まれる汚染物質の量を測定し、ヒ素、クロム、鉛など、人間の健康に有害な重金属の存在に注目しました。
このプロジェクトに参加した青年隊員は、苔を使った作業への興味や経験を測るアンケートに答えました。その結果、ヘルスケアや医療といった分野への関心が高まったこと、野外で苔のサンプルを使って作業することを楽しんだことなどが明らかになりました。このプロジェクトで得られた知見は、今後同様のプロジェクトを展開する際やなどに役立つと考えられます。
「このプログラムを通して、苔について学び、苔がどのように汚染を受け止めているかを知ることができ、苔を守る必要があることがわかりました。でも、このプログラムから得た最も大きなものは、地球を大切にし、持続可能なより良い環境にすることを友人や家族に伝えるようになったことです」と15歳の参加者は言います。
このプロジェクトは、グリーン・ドゥワミッシュ川流域に関連する地域団体や政府機関、大学の研究者などで構成される共同グループ、グリーン・ドゥワミッシュ・ラーニング・ランドスケープの支援を受けて実施されました。
デリアンさんとジョバンさんは、このパイロットプログラムは、若い世代が環境問題などに取り組む際に、さまざまな組織や機関などが共同し研究を行う“コミュニティ科学”の価値を実証したと考えています。また、自分がいる環境や社会、そして自分たちの健康を改善するために、若者たちを環境科学への従事を促すこのようなプロジェクトが、今後全米で数多く実施されていくだろうと考えています。
ソース
https://www.fs.usda.gov/features/seattle-students-study-heavy-metals-forest-service