SDGs 取り組んでいます!

食に関する興味が高まるよ! 板橋区のじゃがいも収穫体験に行ってみた

全国各地の自治体がさまざまな工夫でSDGsに関連したイベントを開催しています。

今回は、東京都の板橋区のイベント「じゃがいも収穫体験」にお邪魔してきました。

板橋区はSDGsの取り組みの進み具合を表す「SDGs先進度調査」で、全国にたくさんある市や区のなかで全国総合ランキング8位(東京都で1位)の評価を得たほど、SDGsの取り組みに熱心な区です。

今回のイベントはSDGsの取り組みのひとつで、大きな目的は「子どもたちが自らの手でじゃがいもを収穫することによって身近な農地に愛着を持ってもらうと同時に、食育の推進を図る」ことです。

板橋区民に地元の野菜を知ってもらい、自分たちで収穫して、おいしく食べてもらいたいという思いが込められています。

 

ちなみに食育とは、生き生きと暮らせるように食の知識と食を選択する力を養い、健全な食生活を実践できる人を育てることです。板橋区では、そんな食育を推進するため、毎年6月を「食育月間」、毎月19日を「食育の日」と定めています。

 

イベントは6月18日(土)午前9時から午後2時まで、板橋区内にある「農業体験農園」で行われました。

参加資格は板橋区内在住・在学で中学生以下の子どもとその保護者。約300人が参加しました。

「じゃがいも収穫」というと、多くの人が一度に集まって一斉に畑を掘るというイメージがありますが、ここでは混雑を避けるため整理入場で行われました。こちらのやり方のほうがコロナの感染対策にももちろんなりますが、参加者がスペースに余裕を持って作業でき、スタッフも丁寧な対応ができるということで、行われているそうです。

会場の「農業体験農園」

参加者は、それぞれに割り振られて決められた時間に会場を訪れます。まず受付を済まして、次に堀り方の説明を受けます。

それが終わると畑に案内されて、いよいよ、じゃがいも収穫の開始です。

スタッフのアドバイスを受けながら、土にまみれて、じゃがいもを探して掘って引き抜いて、と。汗まみれになって格闘しながら収穫したじゃがいもは袋に入れて持ち帰ります。割り当てられた自分たちの区画のじゃがいもを堀りつくしたら終了。じゃがいもがたくさん入った袋をかかえて会場を後にします。

受付
説明
じゃがいも畑

みんな、じゃがいもが想像以上に多く収穫できるのでびっくり。袋がパンパンになって、これが結構重いんです。

ある家族から「重すぎるからタクシーで帰ろうかしら」と、相談する声も耳にしました。

そんな重いじゃがいもなのに、みんな大事そうに抱えながら笑顔で帰っていきました。夕食が楽しみですね!

来た時はちょっぴり緊張気味だったけど、帰るときになると「ありがとうございました!」と大きな声であいさつをしていた子どもたちが多かったのも印象的でした。その声の大きさで、いかに楽しかったかがよくわかりました。

豊作で賑わうじゃがいも畑。想像より収穫が多くてみんなびっくり!

このイベントに参加して、皆さんはどのような感想を持ったのでしょう。

参加者に聞いてみました。

まず、この日、開始時刻の午前9時、最初に訪れた参加者。ケイ君(5歳)とお母さん、おばあちゃんの3人で訪れたご家族です。

畑に案内されると、ケイ君がじゃがいも堀りの隊長、お母さんとおばあちゃんはサポート係です。

「すごいね、また出てきたよ~」

「がんばって~」

「またいっぱい出てきた~」

IMG_6715 キャプション 順調に掘り続けるケイ君

お母さんの声援を受けて、せっせとじゃがいもを掘り続けるケイ君隊長。

「200個とって101個はおばあちゃんにあげるんだ」という意気込みでやってきたんだとか。おばあちゃん思いの優しい隊長ですね。

とれたじゃがいもは、そんな思いを寄せるおばあちゃんに渡して袋の中へ。

イベントスタッフも見守りながらアドバイスを送ります。

「下に隠れているじゃがいもの方が上より多いよ~」

和やかな光景に目を細めてケイ君を見つめるお母さんとおばあちゃん。

お母さんによると、このイベントは毎年参加している常連さんで、その魅力を聞いてみました。

「じゃがいも収穫体験は今回で4回目かな。他所も含めてさまざまな農作物の収穫体験に行きましたけど、じゃがいもは一番とりやすいですね。子どもが飽きないで最後まで楽しんでやっています」

こうした収穫体験によってケイ君に変化が起きたんだそうです。

「食事を残さなくなりましたね。食材をとるところから見ているので、食べ物に対する関心、大切に思う気持ちが高まったんだと思います。料理を手伝ってくれるようになったのも、その影響だと思います。自分でとった食材だから、どのように料理されるか気になってしょうがないんじゃないですか(笑)」

収穫したじゃがいもは大きな袋二つ分。すっかり掘り終わったケイ君に聞いてみました。

──どうだった?

「掘るのは大変だったけど、楽しかった。来年もやりたい~」

──今晩は何食べるの?

「ポテトサラダ」

お母さんから「ポテサラじゃ食べきれないよ」と言われると

「じゃあコロッケにする~」

と、元気に答えて会場を後にしました。

今晩はまたお料理を手伝うのかな。がんばれ~。

左からお母さん、ケイ君、おばあちゃん

 

時間が経ってくると、会場は益々盛況となってきました。もちろん整理入場なので混雑はしませんが、歓喜や感嘆する参加者の声で賑わってきました。スタッフも忙しそうです。

賑やかなじゃがいも収穫会場

また、お話が聞けました。

5人2家族の参加者です。

サーちゃん(4歳)、マーちゃん(10歳)とお母さんのご家族と

アッ君(4歳)とお母さんのご家族です。

お母さん同士がママ友という間柄。仲良しグループで参加です。

左からサーちゃん、お母さん、マーちゃん

 

サーちゃん、マーちゃんのご家族は、これまで板橋区の収穫体験で大根と人参堀りの経験はあるけれど、じゃがいも堀りは初めて。

お母さんが感想を答えてくれました。

「土に触れるというのが嬉しいですね。子どもたちも大喜びでとった野菜を家に帰って主人に見せているんです。これ、とったんだよって。お料理もバクバク食べてくれるようになったのも良い影響です」

姉妹のお二人にも感想を聞いてみました

──マーちゃんはどうだった?

「楽しかった~。今晩はじゃがバターが食べたい」

──サーちゃんも?

「私はポテトフライがいい。またやりたい~」

アッ君とお母さん

アッ君とお母さんは初めての収穫体験です。良い経験になったとお母さんは振り返ります。

「子どもたちが土に触れるって、公園で遊ぶときにちょっとあるぐらい。貴重な体験だと思います。(お子さんを見て)楽しそうです。この機会に子どもが食材や食べることに興味を持ってもらえたら嬉しいですね」

──アッ君、どうだった?

「土に触れて楽しかったです。またやりたい。自分で掘ったので食べ物に興味がわいてきました。今晩はカレーが食べたいです」

みなさん、笑顔で帰っていきました。食べたいものがみんな違うんだね~。

前列左からアッ君とサーちゃん、後列左からアッ君(4歳)のお母さん、マーちゃん、姉妹のお母さん

参加者の言葉を受け取ると、みんな収穫体験の印象が強く、子どもたちの心に残り、食べ物を残さなくなったり、料理を手伝うようになったりと、その後に良い影響があるということがよくわかりました。

食育推進にすごい役に立っていますね。

では、開催者である板橋区役所のスタッフにお話を聞いてみました。

板橋区役所の髙橋拓巳さん

 

板橋区役所 赤塚支所 都市農業係兼農業委員会事務局の髙橋拓巳さんです。

──「じゃがいも収穫体験」を始めるきっかけはなんでしょうか。

「じゃがいも収穫体験」は体験学習事業の一環で行っています。そもそも板橋区は食育推進に力を入れており、じゃがいも収穫体験以前は、落花生やトウモロコシも開催していました。

──このイベントにどのような意義があるとお思いですか。

東京都、特に23区内で収穫体験はなかなか機会がないと思います。貴重な経験を通じて、地元の食材や、食べ物ができる過程、農作業、さらには農業に関心を持ってもらう第一歩だと思っています。

──参加者からどのような声がありますか。

「すごく楽しい」「来年もぜひやりたい」「毎年楽しみにしている」「好き嫌いがなくなった」など、たくさんの嬉しい言葉をいただきます。あと、応募は往復はがきで行うのですが、はがきの空白部分に「今年も楽しみにしています」という言葉が書き添えてあったり、なかにはじゃがいものキャラクターのイラストを描いてくれたり。そういうのを見ると、ますます準備に力が入りますね。それだけ楽しみにしてくれているんだから、しっかり案内しないとって、励みになります。

──イベントを開催してみて、どのような感想をお持ちですか。

この日を迎えるまでに、さまざまな農作業があります。なかには大変な作業もありましたが、こうして参加者の方がニコニコと満足して帰っていただく。その様子を見ると頑張って良かったなって心から実感しています。

この日を迎えるまでに農家さんをはじめ、ボランティアの方や区役所の職員などさまざまな人のご協力のおかげで開催できています。感謝の気持ちを抱きながら、せっかくなら私自身も楽しみながら関与していこうと思っています。

──今後の収穫体験のイベントはありますか?

11月に大根と人参の収穫体験を予定しています。日程は未定です。10月には板橋区役所のホームページと広報誌で参加者の募集告知をしますので、ぜひチェックしてみてください。

ありがとうございました。

参加者だけでなく、開催するスタッフも幸せな気分になれる素敵なイベントでした。