学校や自治体、企業など、いろんなところでSDGsに関連した取り組みやイベントを行っていますね。それだけ多くの人がSDGsについて関心が高いのだと思います。そんななか、世界中の子どもたちと一緒に参加できるSDGsイベント「こども未来国連会議」が注目を集めています。「どんなイベントなの」「参加資格はあるの?」など、会議を開催している「SDGsピースコミュニケーションproject」発起人の一木広治さんに聞いてみました。
──SDGsピースコミュニケーショ projectって、どんなことをする組織ですか?
一木広治さん(以下省略)『東京2020オリンピック・パラリンピック』のレガシー(受け継いでいきたいモノやコト)を生かして、次世代の子どもたちのために未来の課題であるSDGsをテーマに世界が抱えるさまざまな課題をコミュニケーションの力を駆使して平和的に問題解決に向き合い、社会づくりに積極的にチャレンジしようというアクション&オピニオン参加型のプロジェクトです。簡単に言うと、このプロジェクトを通じて「新しい時代の考え方や見方ができる人材を育て明るい社会を創りましょう」という取り組みです。
──こども未来国連会議は、その活動のひとつですか?
はい。このプロジェクトの主な活動は大きく分けて5つあります。まずひとつ目は「こども未来会議」です。この詳細はあとにして全体を説明しましょう。
──こども未来国連会議以外の主な活動とは?
2つ目が「SDGsピースコミュニケーションFORUM」。これは企業や団体、個人など、大人たちが連携してSDGsのテーマに基づいて社会問題を解決するために、いろんなネットワークを使って情報を共有します。そして、そのコミュニケーション力を高めて「平和な社会づくり」に向けて、いろんな意見や考え方を交換する集まりです。
3つ目は「BEYONDコロナ次世代エンタテイメント」です。SDGsピースコミュニケーション projectのそれぞれの活動を多くの人に知ってもらう、参加してもらうことを加速させることを目的に、音楽やメディアなどと融合して著名人にも参加してもらって多彩なイベントを行っていきます。現在は音楽イベントやラジオ番組、トークイベントなどを開催しています。
4つ目は「SDGs学習カリキュラム」。最先端のテクノロジー(科学技術)と世界で起きているSDGsをテーマとする状況を子どもたちに伝えることと、新しいことに挑戦しようとする進歩的な思考を身につけるための小学生向けのSDGs学習カリキュラムの開発、制作に取り組んでいます。
5つ目は「SDGsアイデアコンテスト×地球環境大賞」になります。これは、まだ企画段階なのですが、地球環境大賞というイベントと連携して、そこに高校生を対象にアイデアを募集して、スタートアップから参加してもらおうという試みです。
──こども未来国連会議は、どのようなイベントですか?
世界の子どもたちが集まって、平和で豊かな世界についてみんなで意見を交換するピースコミュニケーションの場です。「SDGs の達成年である2030年の世界はどうなってほしいか、そのためにどのようなアイデアが必要か」をグループに分かれてディスカッションし、グループごとに考えを発表します。催し物のメニューはいろいろありまして、このほかに工作のワークショップ、音楽セッションなどのコンテンツを実施して、友好を深めてもらう狙いもあります。音楽セッションでは「サムライギタリスト」として世界から評価を受けているボードメンバーのアーティスト、MIYAVIさんに参加してもらっています。第2回の今年は日本を含む13か国、43人の子どもたちが集まって実施しました。
──こども未来国連会議は、いつ行われるのですか?
現段階では年に1度の開催です。これまでに2回行われました。例年3月、今年は3月26日(土)に東京の有明エリアにある世界最大級の屋内型ミニチュア・テーマパーク「SMALL WORLDS TOKYO」で開催しました。
──参加資格はありますか?
はい。9歳から12歳までのお子様。日本の学年でいうと小学4年生から6年生が対象になります。対象者でしたら誰でも応募可能です。募集人数はコロナ禍の状況に伴って人数制限があり、変化はあります。前年、今年と50人前後で来年は未定ですが公募はかけていますので、公式ホームページをチェックしてください。https://www.tokyoheadline.com/532455/
──今回のこども未来国連会議では、会場である「SMALL WORLDS TOKYO」の館内を探索する時間もありましたね。
はい。SMALL WORLDS TOKYOは世界最大級屋内型ミニチュア・テーマパーク。トンネルを抜けると1/80のスケールの世界が広がります。エリアは6つあり、「宇宙センターエリア」や「世界の街エリア」、ユニークなところでは「エヴァンゲリオン」や「美少女戦士セーラームーン」の舞台となった街のエリアも再現しています。この施設はSDGsの取り組みに熱心で、こども未来国連会議とのコラボ企画としてミニチュアの街「SDGsピースコミュニケーションシティ」を誕生させてもらいました。シティのシンボルとなるメインタワーは全国の子どもたちからアイデアを募集し、建築家の隈研吾審査員長たちがグランプリアイデアを建設しました。今回参加してもらった国の国旗や参加者のミニチュアも登場し、これらを見学するツアーを行いました。
──SMALL WORLDS TOKYOは誰でも見学できますか。
もちろんです。「SDGsピースコミュニケーションシティ」も展示してありますので、ぜひ見学に訪れてみてください。とても楽しい施設ですよ。
──こども未来国連会議のほかにどのようなイベントが行われていますか?
地域限定のイベントになりますが、こども未来国連会議の国内版が行われます。SDGs未来都市である豊島区(東京都)、浜松市(静岡)、それと万博開催地の大阪です。豊島区が9月、浜松市が10月、大阪は9月に開催予定です。ここで選ばれた代表者が来年度のこども未来国連会議に参加します。
また、こども未来国連会議の開催が好評だったことで、自治体や企業など、関係各所から「ワークショップ的なことでも良いから開催できないか」という問い合わせや要望をたくさんいただきました。ただいま前向きに検討しているところです。
──主催者として、こども未来国連会議の開催を終えて、どのような感想を持ちましたか?
今、私たちが生きているこの時代でもグローバル化した世界になっていますよね。イベントを終えてみると、これからはもっと世界を広く見ていかなきゃいけないなと、強く感じました。それにSDGsについて考えることはもちろんですが、現在は世界中がコロナ禍です。この未曽有の事態によって地球は繋がっていると実感している人は少なくないんじゃないでしょうか。「このままじゃ地球が壊れちゃう」と、みんなが危機感を抱いています。そんな世の中を変えるために、私たちは子供たちから「将来どんな社会にしたい?」という意見を取り入れ、それを実現するためにヒト・モノ・コトのあらゆるアプローチで活動を続けています。そして、その活動を通じてグローバルな視点を持つリーダーを育てていかないといけないって思いました。でも世の中はすぐには変わりません。どうしても時間がかかります。今、私が始めても間に合いません。だから子どもたちに託すしかない。このプロジェクトに参加する人たちは、みんなそういう思いで集まっています。
それと、もうひとつは思ったことは、集まった方々は、みんなバッグボーンとか自分のフィールドを持っている人たちです。みんなの力をちょっとずつでも集めれば、もっと良いことができる。大きな可能性を強く感じました。業界や分野、世代を越えて集まって、それぞれが刺激を受ける相乗効果もありました。
──一木さんが考えるSDGsとはなんでしょうか?
SDGsというと、最初はだいたい難しく考えてしまいますよね。この活動は何番になるのかなって。でも、本来は私たちが地球に生きていて、暮らし続けるためにやらなきゃいけないことってありますよね。生き物を大切にするとか、川や海を汚さないとか、自分ができることをやる。誰でもできることがSDGsですよ。それが子どもたちの次の世代にも受け継がれることになるんです。
──僕たちは何から始めたら良いでしょうか?
人とのコミュニケーションを大切にしましょう。親と話す、兄弟と話す、クラスメイトと話す、先生と話す。そうして仲間、友達を作りましょう。いろんな人と話をし、何回もコミュニケーションをとることで、相手のことを知ることになります。よく知った相手には心を許し、優しくなれます。友達といろんなことを話し合って、自分とは異なる考えがあること知り、ときには相談もする。大切な仲間を見つけてください。「人に優しく、モノを大切に」は、SDGsの大切な基本的な考え方です。
一木広治さん
プロフィール
1964年生まれ。「日本を元気に!」を合言葉に活動するSDGsピースコミュニケーションproject発起人。夢の課外授業総合プロデューサー、 都市型メディア『TOKYO HEADLINE』発行人。21世紀倶楽部理事事務局長。LDH顧問・エグゼクティブプロデューサー、早稲田大学研究院客員教授。大阪大学招聘教授。このほかにも多数の企業、イベントの顧問をつとめる。