“SDGs学び隊”が行く!

使い終わった揚げ物の油が新たなエネルギーに! TOKYO油田

子どもたちが大好きな揚げ物…とんかつ、エビフライ、唐揚げの使い終わった油が、

新たなクリーンエネルギーに生まれ変わる!

「株式会社ユーズ」代表の染谷ゆみさんに、

使用済み食用油をリサイクルする『TOKYO油田』の取り組みを伺いました!

天ぷら、とんかつ、コロッケ、エビフライ、唐揚げ……子供から大人まで大好物の“揚げ物”。みなさんは、おいしく食べ終わった後のその油をどうしていますか? 毎年、家庭から出る使用済みの油は、東京だけでも約10万トン以上に及ぶといわれ、そのほとんどがゴミとして捨てられ、生活排水として流されています。

しかし、食卓で使い終わったその油は、実は新たな燃料として車を走らせたり、電気をつけたり、地球に優しいエネルギーに再利用することができるんです。

この“使用済み油”に着目し、1997年に食用油のリサイクル事業をスタートさせたのが、『株式会社ユーズ』代表の染谷ゆみさんです。東京の家庭や事業者から使用済み天ぷら油を回収し、バイオ燃料や、石鹸、畑の肥料、家畜の飼料などに再利用する『TOKYO油田』プロジェクトを始めました。

「使い終わった油を一滴残らず集めて、資源化する。集めることは、油田を発掘するようなものです」と話す染谷さんは、使用済み食用油が大量に出る大都市・東京が“資源の宝庫”に見えたそうです。

そんなプロジェクトをより深く知ろうと、子ども記者のゆのちゃんとりゅうとくんがやってきたのは、『TOKYO油田』が運営する墨田区の「油田カフェ」。カレーやパン、ケーキなど豊富なメニューを揃え、地域の人々が交流する場所「油田カフェ」で、使い終わった油を再資源化する『TOKYO油田』の活動を伺ってきました!

昔は、環境問題を解決するビジネスがなかった

――このプロジェクトを始めたきっかけはなんですか?

染谷:私は、ずっと環境問題に関心があったのですが、たまたま祖父の代から、油のリサイクルの会社をやっていたんです。戦後の昭和24年に創業したんですけど、戦後はどちらかというと、環境問題というよりは、日本が敗戦してモノがなく、使い終わった油も貴重な資源だったんですね。

私が環境問題に目覚めたのは、18歳のときにアジアを放浪していて、そこで土砂災害に遭ったことが始まりです。土砂災害は“天災”だと思っていたのですが、現地の人に「これは、人間たちが木を切り倒して環境を破壊している結果、自分たちに降りかかったんだ」と言われて、ものすごく衝撃を受けました。

そのときに、環境の仕事をしていきたいと思ったんですけど、まだ当時は、環境問題を解決するビジネスはなかったんです。ないどころか、「環境問題は、経済を発展させるための足かせになる」「ビジネスなんか成り立たない」とマイナスに捉えられていました。

それでも、環境問題を解決していかないと、絶対に行き詰まるだろうと思っていたので、今『SDGs』が浸透してきて、「ずいぶん先を行ってたね」とよく言われます。そういう意味で、時代がついてきたのかなと思います。

油がリサイクルできることを多くの人に知ってほしい

――どうやって、家庭の油を集めているんですか?

染谷:地域の拠点に回収ステーションを設けて、家庭から出る廃食油を集めています。使用済みの油をオイルの容器やペットボトルに入れて持ってきてもらえれば大丈夫です。(※首都圏を中心に、約500ヶ所の回収ステーションが設置されています)

例えば、こういった「油田カフェ」や、リサイクルショップ、チャリティショップも応援してくれて参加してくださるんですけど、あとは、行政ともタイアップしていて、官民両方で回収ステーションを増やしています。これは30年近くやり続けていて、知っている人は知っているんですけど、まだまだ力不足で油は足りていないなと思っています。

やっぱり、「何に使われているのか」がわかると、みなさん「出そう」という気になるんでけど、「油がリサイクルできる」と思ってないんですね。わからないと、「これをどう捨てたらいいんだろう」と思ってしまうので、この活動はずっと続けていきたいです。

『油田カフェ』のキッチンも覗かせていただきました!
パンは、毎日、国産小麦を粉から練って生地を作っているそうです

――使用済みの油が、どんなものに生まれ変わるんですか?

染谷:独自に開発した技術で、車を動かす“バイオディーゼル燃料”に生まれ変わらせます。車の燃料として、バスも走ってるんですけど、まだ一部の地域だけなので、なかなかみなさんには届いていないかなと思います。あとは、ろうそくや石鹸です。例えば、地震が起こって、明かりがない場合も、家の油があったら、ろうそくができるんです。子どもたちとろうそくのキャンドルづくりワークショップも定期的にやっています。他にも、肥料やペンキ、印刷物を刷る時の大豆インクも流行りましたね。

あと、バイオ燃料は発電もできるので、目黒川にイルミネーションを灯しています。片道1.3キロくらいある川なんですけど、五反田、大崎など、品川区のみなさんから協力してもらっています。これは10年近く毎年やっていて、今や品川のみなさんの油でほとんどまかなっていますね。

――東京が油田のようなものだったとは知らなかったです! 大変ではなかったですか?

染谷:それこそまだ20代だったときに、「東京はまるで油田だ!」って言って、油集めをしていたんですけど。当時、今みたいな環境問題はなくて、バブルで景気がよかったから、3K(※きつい・汚い・危険)といわれる仕事に、「なんでこんなに汚い仕事をするの」「しなくても全然稼げるのに」「事情でもあるの?」と言われて、そのときにすごく思い悩んだんですね。「環境問題を解決する」というミッションが自分の中にあるけど、トラックに乗って、「なんでこんなに大変なことやってるんだろう」と思う時はありました。

でも、「東京から油田を掘り起こしてるんだ! そういう価値のある仕事なんだ!」って思ったときに『TOKYO油田』という単語が閃いてきたんです。「東京には油田があるんだ!」って言うと、みんなが「え〜?」って関心を示してくれるし、それはそれで面白いですね。「どういうところにあるの?」って聞かれると、「みんなが使っている、家庭から出る油や、多くの飲食店から油は出る。実は東京には油田があるんだよ」って言って。これを集めさえすれば、大きな資源になるんです。

「油田カフェ」で飼育しているカメオくん。地元の人々に愛されています!

子どもたちにはまだまだ可能性がある

――これからの目標はありますか?

染谷:まだまだ『TOKYO油田』が成功していないので、「東京を油田に変える」というところをしっかり発信していかなきゃいけないなと思います。特にこういう時代になってきて、資源不足、エネルギー不足で、だんだん人が不安でギスギスするんですよね。なので、なおさら、『TOKYO油田』を認知してもらって、「ちゃんと集めるのは当たり前」と活用していただけるといいと思います。

カメオくんに、子ども記者の二人も興味津々!

――子どもたちに、伝えたいことはありますか?

染谷:日本は特に資源がないので、こういったことを通して、「油を捨てないで」「リサイクルに回そうよ」ってお家の人に言ったり、自分たちにできることを創意工夫して考えてもらいたいと思いますね。特に、これから未来を担う子どもたちは、探せばまだまだ可能性がいっぱいあると思うんですよ。大人よりも子どもたちのほうが意識の高い時代になってきたなと思います。

正直、『SDGs』について、我々上の世代に問いかけても、「そうは言ってもね…」といった枕詞がつくんですよ。でも、私より若い世代は、「そうは言っても」なんて言わないんです。だから、やっぱり時代は変わってきたなという実感はものすごく強い。意識の転換というところをみなさんが持つべきなのだと思います。

「使い終わった油を全て集める」という目標のもと、使用済み食用油の再資源化を30年近く続けてきた染谷さん。普段の食卓に並ぶ揚げ物の油がさまざまなエネルギーに生まれ変わることを知り、ゆのちゃんとりゅうとくんも「すごい!」と驚きの声を上げていました。自分たちが使った油を回収してもらうだけで、環境問題に貢献できるとしたら……まずは身近にできることから始めてみませんか?

 

油田カフェ

住所:東京都墨田区八広3-39-5 ライオンズマンション1階

TEL:03-6231-9033

定休日:月曜日、日曜日、祝日

 

TOKYO油田 株式会社ユーズ

住所:東京都墨田区八広3-39-5

TEL:03-3613-1615

https://www.tokyoyuden.jp