SDGs 取り組んでいます!

給食からSDGsを考えよう! 江戸川区の小学校に行ってみた 前編

江戸川区学校給食食育キャラクター・ペロンちゃん。「私たちの楽しい給食を見てください♪」

 

日本各地の市町村(自治体)や会社でSDGsについてさまざまな取り組みが行われています。

SDGsの達成したい目標は17。たくさんありますので、「どの目標に向かって何をしましょうか」と、各所で取り組みの内容は異なるようです。

では、市町村や会社で実際どのようなことに取り組んでいるのか。その一例をみていきたいと思います。

3年2組のみなさん

今回は、東京都江戸川区の取り組みついてみてみましょう。

江戸川区は2021年度 SDGs達成に向けた優れた取り組みを提案した自治体に認められる「SDGs未来都市」に選定され、積極的に取り組んでいる自治体のひとつです。

SDGsの「誰一人取り残さない」という理念は、そもそも江戸川区の目指す共生社会の考え「ともに生きるまち」という考えとも一緒で、SDGsへの意識が高い街といえます。

そんな江戸川区で、今年の2月に区内の小中学校を対象に「みんなの給食~給食からSDGsを考える~」という取り組みが行われました。各校で実施日を設け、2月中に全校(小学校69校、中学校33校)が体験するというスケジュールです。

どのような目的かというと。

普段の何気ない生活の中でも、実はSDGsに繋がっている行動があります。

その一例が食事です。

料理に出てくる魚は海を汚したら食べられません。お肉も山や森、自然が豊かなところで育てられています。海や緑を守らないと美味しい食材が届きません。目の前の料理は残さず食べられるの? 食器はどうやって作っているの? 飲み終わった牛乳パックはリサイクルするの? などなど、これすべてSDGsのお話と一緒です。

つまり食事のこと一つ取り上げてもSDGsに繋がることはたくさん考えられます。

こうして「みんなの給食~給食からSDGsを考える~」は、体験する生徒をはじめ、その話を聞いた保護者や地域の人が、学校給食を通じてSDGsを考えるきっかけとなるように始められました。

東京ディズニーリゾートのお隣・葛西地区の小学校にお邪魔します!

この日、取材に協力していただいたのは江戸川区立第四葛西小学校です。

東京の東部、千葉県に隣接する葛西地区は多くの観光客が訪れる葛西臨海公園が有名。また、近年ではおいしいインド料理店が軒を連ねるようになり、人気のグルメタウンとしても知られています。

校門に到着した時間はちょうと休み時間。子どもたちは元気に校庭を走り回っていました。

 

最初に案内されたのは3年2組の特別授業です。

「みんなの給食」を行う日の学校では、給食を食べる前に、給食の献立を毎日考えてくれている栄養士の先生による「給食からSDGsを考える」という特別授業が行われます。

江戸川区では各学校に給食室があり、それぞれに栄養士さんが働いています。毎日、出来立ての給食が食べられるなんて嬉しいし、給食をトラックで配送することがないのも、地球にやさしい取り組みといえますね。

そのほかの全校クラスは給食の時間で「いただきます」をする前に各担任の先生から「みんなの給食」のこと、SDGsについての説明があります。

栄養士の先生による「給食からSDGsを考える」授業

栄養士の先生は、モニターを使ってわかりやすく授業を進めます。

自分ができるSDGsをみんな一生懸命考えてプリントに書いていました

 

SDGsの説明から始まり、みんなが住んでいる江戸川区の取り組みのこと、今日の給食の説明。そして給食からどんなSDGsが考えられるのかをみんなの意見を聞きながら進められました。

SDGsの授業の後半は「自分ができるSDGs」を一人ひとりが考えて、挙手をして発表します。

「エコバッグを使う」

「シャワーを出しっぱなしにしない」

「残さないで食べる」

などなど、そもそも知っていた子も、今日初めて知った子も、みんなSDGsのことをよく理解していて、感心する意見ばかりが飛び出し、とても有意義な授業を見学させてもらいました。

自分が思いついたことを「これって何番になるかな」と、SDGsの目標の1~17番のうちどれに該当するか、しないのか。子どもたちがにぎやかに相談しているシーンが印象的でした。

みんなが手を挙げて自分ができるSDGsを発表していました

いつもとちょっと違う給食って、どこが違うの?

授業をした栄養士の梅原千恵子先生にこの日の給食のことを聞いてみました。

立っているのが栄養士の梅原千恵子先生

──「みんなの給食の日」に提供される今日の給食はいつもとどう違うのでしょうか?

各学校によって違いますが、江戸川区内の全校で共通している取り組みから説明しましょう。たとえば地場産物を積極的に活用した給食です。代表的なのが小松菜です。江戸川産を地元の農家さんから直接購入して使用しています。東京都の水産物も時期によって異なりますができるかぎり使用しています。八丈島のトビウオとか東京湾のアジとかですね。

このほか、さきほどの授業でも説明しましたが、丁寧な調理でできるだけ食材の廃棄を少なくする工夫をしています。それでも出てしまった生ごみは、養鶏場などの飼料としてリサイクルしています。あと、食器は強化磁器で、割れてしまったらこちらもリサイクルします。ただ、これらは江戸川区がこれまで日々取り組んでいることで、この日だけ特別にしていることではありません。

──ありがとうございます。ということは江戸川区は以前からずっとSDGsの取り組みを進めているのですね。では、「各学校によって違う」と言われましたが、この学校の給食はどのような特色があるのですか?

どの学校にもさまざまな事情を持って、いろんな気持ちを抱いて給食を迎える生徒がいます。食べ物の好き嫌いというものもありますが、アレルギーを持つ生徒や宗教的事情、食べ方が早い遅いとか。特にアレルギーにはさまざまな種類がありますので、自然とその学校の生徒たちが持っているアレルギーの種類によって給食の献立が違います。こうしたさまざまな事情を抱える子供たちも(アレルギー)除去食ではなく、みんなで一緒に同じ献立を食べましょうというのが今日の給食の目的の一つです。SDGsの「誰一人取り残さない」という理念に繋がります。

──つまり、いつもとちょっと違うのはみんなで食べられる献立の実現なのですね。でも、生徒はたくさんいますし、アレルギーの種類も違います。宗教的な事情も絡めると、みんなが食べられる献立作りは難しいのではないですか?

はい。小麦や卵、海老のアレルギーなど、いろいろありますので、食材を除去しながら最終的に辿り着いた献立が和食でした。全員がNOとならない最善のメニューが今回の献立になります。

──いろいろ考えた末にできた給食なのですね。これから食べる生徒たちにどんなことを思いますか?

みんなに美味しく食べてほしいし、笑顔になったら嬉しい。それだけですね(笑)

第四葛西小学校の「みんなで食べるおいしい給食」

では、今日の給食をのぞいてみましょう。

    

美味しそうですね。おとなの人は給食が懐かしいと子供の頃を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。

献 立

ご飯……黄色い粒粒はキビ。穀物の一種で、キビを入れると食感がとモッチリする。雑穀の栄養分も取れる。

エコふりかけ……給食で作ったさつま汁のダシ(昆布、カツオ)を乾燥して細かくして、さらにほかの食材も足して食感と味を調えたふりかけ。

たらの香味焼き……白糸たらをにんにく、しょうが、ねぎ、醤油に漬け下味をつけてから焼いたもの。白糸たらはビタミンやミネラルをバランスよく含んでいて低脂肪、低カロリーのお魚。MSC認定を受けた白糸タラでSDGsに最適な食材を使用。

※MSCとは→Marine Stewardship Council(海洋管理協議会)の略。水産資源と環境に配慮して適切に管理された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物。

さつま汁……さつまいも、ごぼう、にんじん、だいこん、こんにゃく、厚揚げ入りの汁物。さつま芋が皮ごと食べられるのもエコポイント。

小松菜のおひたし……江戸川区の農家が学校に配達してくれる小松菜を使用。キノコ類なども足し、それだけでは食べにくいので、少しツナとオカカを入れて食べやすくひと工夫。

フルーツ……スイートスプリング。国産のオレンジ。みかんにはっさくを交配して育成された柑橘系フルーツ。爽やかな甘さと香りが特徴。

牛乳……国産牛乳
(献立以外のSDGsポイント)

食器……強化磁器。これまではアルマイトやメラミンなど落としても割れない素材の食器を使用していたが、江戸川区は家庭の食卓に近い食器をあえて使用。体にも良い。食器が割れることもあるが、割れた場合、回収してリサイクルされる。

改めて思うこと。

給食からSDGsを考えてみると食材のことだけでなく、食器やこれを洗う洗剤のこと、食べ残しのこと、牛乳パックのことなど、いろんな角度から思いつくことがありますね。

あなたはどんなことを思いつきましたか。

何気ない普段の行動からSDGsのきっかけを見つけることって、とても良い機会だと思います。

 

さあ、では、次はお待ちかねの給食の時間をのぞいてみましょう。

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「次はいよいよ給食の時間だよ♪」