日本各地の市町村(自治体)や会社でSDGsについてさまざまな取り組みが行われています。
実際どのようなことに取り組んでいるのか。その一例をみていく企画です。
今回は、東京都江戸川区の取り組みついてみていきます。
江戸川区では、今年の2月の1カ月間で区内の小中学校を対象に「みんなの給食~給食からSDGsを考える~」という取り組みが行われました。
そのレポートの後編になります。
前編は、江戸川区の取り組みのこと、「みんなの給食~給食からSDGsを考える~」の内容、取材に協力してくれた第四葛西小学校のSDGs授業のこと、この日の給食の献立の説明などを紹介しました。
後編はその続き! 待ちに待った給食の模様からレポートします。
この取り組みのメインイベントである給食です。みんながどんな“おいしい顔”をしてくれるのか、とても楽しみです。
お待ちかねの給食が始まったよ~
お昼の12時20分、午前の授業を終えて楽しい給食の時間になりました。
全校で一斉に配膳の準備が始まります。
給食の時間は2年1組にお邪魔しました。
白衣を着た給食係の前に主食、主菜、副菜、汁物、果物、牛乳を配る配膳容器が並んでいます。
みんな手際よく配ります。
トレーを持った生徒も速やかに並んで、あっという間にクラス全員の配膳が終わりました。
みんなが席について「いただきます」をする前に、今回の給食がいつもとちょっと違うこと。「みんなの給食の日」についての説明がありました。
何人かの生徒たちが教壇の前に立ち、栄養士の先生が手作りした、今日の献立とその説明のプリント用紙を読み上げます。
続いて、担任の先生からも補足の説明が入ります。
そして、今日の給食をきっかけに「SDGsをみんなで考えてみましょう」という声に返事をする子どもたち。
みんながSDGsを知り、関心を持ったところで、それでは「いただきます」。
栄養士さんの考えた「全員で一緒に食べられる給食」をパクパクと口に運びます。
さてリアクションは…。
残念ながら、今の状況はまだまだコロナの感染対策のど真ん中。互いに距離をとった状態で座って、会話をしない黙食が守られています。
子どもたちは、とても行儀よくルールを守っていましたが、食事を口に運ぶと満足そうな微笑みを見せてくれました。
いくらコロナ対策があっても、笑顔はいつでもどこでも大丈夫。笑顔のリアクションは「おいしい」と言っているようでした。
みんな、おいしいリアクションをありがとう。
ちなみにこの2年生たち。入学した時からコロナの感染対策が始まっており、机を並べておしゃべりしながら給食の時間を過ごした経験は学校に入って一度もないそうです。せっかくの楽しい給食なのに…。
早く元の生活になってワイワイガヤガヤする給食の時間が戻りますように!
食事が終わって、みなさんに感想を聞きました
給食が終わって、特別授業が行われた3年2組に再び戻ってきました。
このクラスは江戸川区の地元野菜である小松菜の勉強をするなど、そもそもSDGsの意識が高いクラスだそうです。
さてさて、「みんなの給食」を迎えたこの日、どのような感想を持っているのか。
3年2組担任の高橋巧実先生に聞いてみました。
──給食が終わって、どんな感想をお持ちですか?
このクラスにはアレルギーを持っている子がいます。その子は毎日、おうちでお弁当を作ってもらって登校していますので、クラスメイトと一緒に同じものを食べたことがありません。でも今日は、栄養士さんが特別に考案してくれた献立です。その子がみんなと初めて給食を一緒に食べられたので、すごくよかったと思います。
──特別授業を受け、給食を食べ終わった子供たちを見て気づいたことはありますか?
子どもたちの意識が高まったと思います。食べ物を残さないで食べようと思ったり、食べられる子でも食器をきれいにして返そうとか、彼らの心に何かの意識が芽生えたと思います。一人ひとりができる範囲で、一週間に一回、一カ月に一回でも良いです。無理はしないで自分なりのできる範囲でやってくれると思います。今回は栄養士さんによる特別授業なので、より食べ物の話が身近に感じられましたし、その後に給食ですから、すごく理解しやすかった。子供達には良い体験になったと思います。
──この日をきっかけに生徒たちに願うことはありますか?
SDGsは意識次第で今日からでも始められることです。でも子供たちは今日までSDGsを知らない子もいました。知らない人に知るきっかけを与えるのはとても大切なことです。知ってしまえば、自然と意識できるようになりますから。知らないと知るって、大きな前進です。今日まで知らなかった子は、おうちに帰って、お父さんお母さんに話すでしょう、そして兄弟へと。そうして広がっていったら良い連鎖になります。そうして、ゆっくりでも着実に多くの人に広まってSDGsを意識する人が増えてくれると良いですね。
続いて、子どもたちを代表して3年2組の白鳥晴琉君にインタビューに答えてもらいました。
──今日の給食、どうでしたか?
「今日、僕は学校で初めての給食だったんです(晴琉君はアレルギーのためお弁当で昼食をとっていました)おいしかったです。友達と一緒に同じものを食べられて楽しかったし、嬉しかったです。また、こんな給食があればいいなって思います。また、みんなと一緒に同じものを食べたいなって思います」
──SDGsについて関心は高まりましたか?
はい。SDGsは環境問題とかいろいろ目標があるけど、少しずつでもいいから、普段から意識して行動したいなって思いました。
──これからやっていこうと思うことはありますか
できればなんですけどSDGsをもっと進めるために、なにかを作ったり、開発したり、SDGsに関われる仕事ができたらいいなと思ってます。これからいっぱい勉強します。
みんなと食べる給食にすごく喜んでいた晴琉君。すごいハキハキと、堂々とインタビューに答えてくれました。
また、みんなと一緒に給食を食べられるといいね。
こうして給食が終わり、片づけが始まりました。空になった牛乳パックも当番生徒が回収し、リサイクルされます。
江戸川区の学校ではSDGsの意識が確実に高まっていることを実感した1日でした。
第四葛西小学校のみなさん、ご協力ありがとうございました。
「みんなの給食~給食からSDGsを考える~」の給食 ほかの学校の献立も見てみたい
ところで、この「みんなの給食~給食からSDGsを考える~」という取り組み。
ほかの小中学校の給食はどんな献立だったのか。簡単に紹介しましょう。
南小岩小学校
献立
小松菜とキャベツのごま和え…小松菜は江戸川区内の農園で採れたもの。
のりのつくだ煮…手作りなので添加物や保存料はなし。
厚揚げの大豆ミートのあんかけ…お肉の代わりに大豆ミートを使ったあんかけ。
あんかけ汁…野菜のうまみと昆布のだしでみんなが食べられるように工夫。
ご飯
みかん
麦茶
南葛西小学校
献立
SDGsサラダ…小松菜は江戸川区内の農園で採れたもの。ブロッコリーは芯も捨てずに使用。
清見オレンジ…国産で低農薬。
昆布ごはん…だしから昆布を捨てずに使った炊き込みごはんです。
シロイトダラのフライ…環境に配慮した安全な魚を使用。
みそ汁
牛乳
瑞江第三中学校
献立
ココアケーキ…卵や乳製品を不使用。
大豆ミートのキーマカレー…お肉の代わりに大豆ミートを使用。
小松菜サラダ…小松菜は江戸川区内の農園で採れたもの。
緑茶。
篠崎第三小学校
献立
小松菜と大根のサラダ…小松菜は江戸川区内の農園で採れたもの。
ご飯とエコふりかけ…だしからのかつお節と昆布を使用。
いなだの香味揚げ。いなだは北海道産。
みそけんちん汁…旬の野菜を使い皮も捨てずに工夫して調理。
牛乳
各校で工夫していて、とても興味深いです。どれもとってもおいしそうです。
SDGsを意識した食事って、こんなにたくさんあるんですね。
考えると、いっぱいアイデアが出てきそうです。
「みんなの給食」を企画した江戸川区にお話を聞いてみたよ
こうして2月末日をもって一か月間にわたって行われた「みんなの給食~給食からSDGsを考える~」の取り組みは終わりました。
最後にこの取り組みを行った江戸川区に感想を聞いてみました。
答えてくれたのは江戸川区教育委員会事務局 学務課給食保健係の下村衣代さんです。
──「みんなの給食の日」が終わってみて、どのような感想をお持ちですか?
江戸川区の給食は、栄養バランスがよく、各学校の給食室で心をこめて作られた手作り給食です。また、地元農家で収穫された小松菜や姉妹都市鶴岡産の特別栽培の米を積極的に使用し、牛乳パックのリサイクルや食器等の洗浄に使用する洗剤は環境に配慮したものにするなど、これまでもSDGsと繋がる取り組みをしてきました。
「みんなの給食」は、江戸川区の小・中学生、保護者、地域の方々「みんな」が、身近な「給食」からSDGsを考える機会となるよう、全校で実施しました。
──学校からどのような反応がありましたか?
さまざまなご意見をいただきました。その一例が以下のような回答です。
「普段から給食で取組んでいることがSDGsに繋がっていることを子どもも大人も再認識できた」
「家庭から弁当を持参している児童が初めて給食を食べることができた」
「本人だけでなく学級の友達も喜び、『おかわり』を優先させてあげる様子などが見られた」
「残食が少なかった」
「今回限りでなく、継続したいと思った」
貴重なご意見、ありがとうございました。
──今後のことと教えてください?
これからもSDGsの達成を目標にし、これまで培ってきた「江戸川区の給食」を大切にしながら、「児童生徒の笑顔と未来につながる給食」を提供してまいります。
お忙しいところ、コメントに協力いただきましてありがとうございました。
今後も江戸川区のSDGsのイベントがありましたら、また取材したいと思います。
おわり