SDGsに取り組む世界の子どもたち

アメリカ・メリーランド州で14億ドルの園芸産業の将来を見据えた 「グリーンスクール」を設立

アメリカ・メリーランド州にある都市ソールズベリーのパークサイド高校では、まるでクリスマスのようで、温室テーブルに赤と白のポイセンチアが並び、ポインセチアで作った旗やホリデーリースが飾ってあります。

学生が運営する「A+ガーデンセンター」では植物やお茶、蜂蜜求めってやって来るお客様を迎えます。

1999年のオープン以来、センターは国内最大級のビジネス向けの学校となりました。

10万以上の野菜、ハーブ、ポインセチア、宿根草の植え付けから販売、オンラインプロモーションまで、すべての作業を学生たちが行っています。

この売上は、ビジネスと教育イニシアティブの維持に役立っています。

2021年8月下旬、A+ガーデンセンターでは園芸学科の学生やボランティアが新学期早々に販売するパンジーを植える作業が始まりました。写真提供:Jerry Kelley

 

キャリア&テクニカル教育プログラクラスは、ほとんどが女生徒で、今年度の男子生徒は1名のみ。平均46名の生徒がおり、その3分の2は他のウィコミコ郡公立学校から毎日バスで通っています。

1980年代にモンゴメリー郡で造園業の家に育てられ、ファッション業界でバイヤーやマネージャーとして数十年間働いてきたジェリー・ケリーはプログラムの支配人です。

「私の活動は”恩返し “なんです。私たちの使命は、学生が環境産業のあらゆる側面に関わることができる機会を提供することです」

パークサイド・ハイA+ガーデンセンターで育てられたポインセチアについて、光の状態が大型コンテナの植物にどのような影響を与えるかを研究するため、データを収集するアビー・マーフィーさん。写真提供:Rosanne Skirble

彼女はパートナーのリーフ・ワードさんとともに、2022年春の植物科学コンテストで、FFA(旧フューチャー・ファーマーズ・オブ・アメリカ)に研究成果を発表する予定です。

マーフィーさんは通常の授業を”ブックワーク”と名付け、園芸の授業の方を意欲的に行なっていると言います。

「外に出られるというのは、本当にいいことだと思います。温室でこのようなことをしていると、もっと自分らしく、もっと人生を楽しめるような気がします」

とマーフィーさんは言います。

2021年、マーフィーさんのクラスメートで、アリソン・トライベックさんとゾーイ・ブラッドリーさんは、キク属に関する研究でFAAのコンテストでメリーランド州1位、全国10位を獲得しました。研究に加え、トライベックさんは「A+センター」でレジ係から庭師、市民科学者まで多くの役割を引き受け、そのすべてに秀でた成果を成し遂げいます。この経験は、彼女をより成長させてくれたとマーフィーさん。

「他のクラスでの学習は暗記することがメインです。でもここでは、頭を回転をさせ、考えを巡らせます」

とトライベックは言います。

ケリーさんは国連による持続可能な開発目標、すべての人にとってより良い、より持続可能な未来を実現するための計画案を毎年、学年をスタートする時に配っています。

ケリーさんは、生徒たちに、これらの目標のうちどれが自分にとって最も重要であるかについて短いエッセイを書くよう求めています。

生徒がどう反応するかで、生徒の興味が明らかになり、それをケリーさんがカリキュラムの課題や研究プロジェクトに織り込んでいくのだそうです。

トライベックさんのエッセイは、”気候変動とそれがフードマイル(市場までの輸送)に与える影響、そしてクリーンで再生可能な安価なエネルギーについて”を探求したものです。

3年間、1クラスまたは2クラス制で、学生は出身校の卒業必須科目とパークサイドの植物・環境科学、ランドスケープデザイン、マネジメントの科目を両立させます。プログラムの最後には難しい試験を受け、合格すればメリーランド州園芸・造園・温室協会よりプロの園芸家としての認定を受けます。同協会によると、この資格は14億ドル規模の園芸業界への就職に有利に働くとされています。

ケリーさんは、パークサイドの職業訓練コースは環境リテラシーを高めることであり、その思いは「A+センター」とその隣の教室を越えて広がっているのを見てきたと言います。

「2015年から継続中のプロジェクトですが、学生たちは協力して、養蜂場、蜂の箱、コウモリ小屋、鳥の餌場と鳥の家、そして何百もの在来植物を追加しました。2017年には、全米野生生物連合からスクールヤード・ハビタットに認定されました」

園芸学講師のJerry Kelleyさん(ジェリー・ケリー)とソールズベリー・サステナビリティ・ディレクターのAlyssa Hastingsさん(アリッサ・ヘイスティングス)が、全米野生生物連合から校庭の野生生物生息地として認定されたパークサイド高校の野生生物回廊を指差す。写真:Rosanne Skirble

2017年、パークサイドは「グリーンスクール」になりました。非営利団体のメリーランド州環境・野外教育協会(MAEOE)に認定され、同団体のミッションは、州の目標と密接に連携しています。

2011年、メリーランド州は全米で初めて、環境リテラシーを高校卒業要件として義務付けました。2019年のグリーンスクール法では、MAEOEに150万ドルの助成金が与えられ、この助成金は、2027年までにメリーランド州の学校の50%を「グリーンスクール」として認証するという同団体の目標達成に役立つと、 ローラ・ジョンソン・コラード専務理事は述べています。

パークサイド園芸学部の3年生、サラ・エラ・ホフマンさんは、公共政策が大きな影響を与えると考えています。

「私は環境政策学を専攻したいと思います。なぜなら、環境に大きな変化を起こすには政治を通すしか方法がないと思っているからです」

園芸プログラムのおかげで、ソールズベリーのバウンドレス・コミュニティ・ガーデンのボランティアマネージャーを引き受けるリーダーシップと自信を得ることができたと続けます。

「16の花壇があり、自生の植物や花が植えられていて、地域の住民たちに開放しています」

彼女の活動は、ソールズベリー市のジェイコブ・デイ市長と、市のサステナビリティディレクターであるアリッサ・ヘイスティングスさんの目に留まり、市長のサステナビリティ諮問委員会のメンバーにホフマンさんが抜擢されました。”

「若者の声は重要です」

とヘイスティングスさんは言います。

「彼らは私たちの未来ですから、彼らが街の意思決定に参加することが重要なのです」

ヘイスティングスさんはこのメッセージを生徒たちに伝え、キャリア・アンド・テクノロジー教育の「A+ガーデンセンター」に携わる生徒たちが、製品のリサイクル、節水、栄養分の管理、廃棄物の処理などに尽力したことを祝福しました。

これにより、2019年にセンター・ソールズベリーのグリーンビジネス認証を取得し、2023年まで更新されたと学生たちに伝えています。

「持続可能な都市には、持続可能なフードシステムが欠かせません。若い人たちが自分たちの食べ物を育てる方法を知り、花や農産物を生産する方法を知ることで、地域経済の発展、地域食料経済の発展、そしてそれを持続可能な方法で行うための大きな足掛かりとなります」

今年度、パークサイドはグリーンスクールの認定を更新し、学校のグリーン委員会と協力してカリキュラムやグラウンドのプロジェクトを進めています。園芸プログラムでは、すでに屋上庭園、浮遊湿地、牧草地を追加していますが、これらすべてに多様な体験型活動や学術研究、教育機関やソールズベリーやその周辺の地域との連携が必要となります。

 

 

 

 

https://www.marylandmatters.org/2021/12/14/maryland-seeds-green-schools-as-students-eye-future-in-1-4-billion-horticulture-industry/