まだ食べられるのに捨てられてしまう商品を販売する無人販売機。
『fuubo』を展開する「みなとく株式会社」の松清有沙さんに、
食品ロス解決に向けた取り組みについて、お話を伺いました!
毎年、私たちは、まだ食べられる食品をどれだけ捨ててしまっているのでしょうか。
日本では、年間に約570万トンもの食品ロスが発生しているそうです。そのうち、規格外品・返品・売れ残りなどの事業者からは300万トン以上、食べ残し・直接廃棄などの家庭からは260万トン以上の食品ロスを生んでいると推計されています。
そこで開発されたのが、まだ食べられるのに廃棄してしまう商品を購入してもらう無人販売機『fuubo』です。納品期限などの理由で販売が難しくなってしまったものの、品質的には問題のない各都道府県にある食品メーカーの商品を安く販売しています。
2021年6月から、函館・新宿・原宿・名古屋・広島の5か所に設置されたことを皮切りに、現在では全国各地の13か所にまで広まっている食品ロス削減BOX『fuubo』。設置をスタートしてから12月までの半年間で約1トン分もの食品ロスを削減できているそうです。
「3年で500台、5年で1000台の設置を目指しています」と語るのは、この『fuubo』を運用する『みなとく株式会社』の松清有沙さん。
『fuubo』の特徴は、非対面・非接触・キャッシュレスで商品を安全に購入できること。「普通の自動販売機はお金を入れてボタンを押して買っていただきますが、『fuubo』は、事前にスマホで決済いただいて、取りに来ていただく仕組みになっています」と話す松清さんに、東京の「ネスカフェ原宿」に設置された『fuubo』を紹介していただきました!
今回、「ネスカフェ原宿」に設置された『fuubo』を実際に体験してみたのは、子ども記者のりょうかちゃんとひなたくん。
「一見、普通の自動販売機に見えるけど、何が違うの?」
と興味津々の2人が、無人販売機 『fuubo』の秘密に迫りました!
「捨てられるはずだったものを救う」という仕組み
――無人販売機『fuubo』では、どんな商品を販売しているんですか?
松清:ネスレ日本株式会社さんの自販機だと、基本的にはキットカットやネスカフェコーヒーを販売していますが、名古屋に設置している自販機は、お菓子やパン、カップ麺なども売っていて、将来的にはお弁当やお惣菜、野菜なども販売していきたいと思っています。
キットカットは、今、普通の店舗では違うパッケージのものが売られているのですが、ここ『fuubo』では、リニューアル前のパッケージを販売しています。まだ食べられるのに、「パッケージが違う」という理由だけで、賞味期限がかなり先でもお店に出せなくなってしまうんです。『fuubo』では、そうしたお店で売れなくなってしまった商品を販売することで、“本来であれば捨てられるはずだったものを救う”仕組みになっています。
――どうして『fuubo』を開発しようと思ったんですか?
松清:代表(沖杉大地氏)が世界一周旅行をするバックパッカーだったことが始まりです。アフリカの子供たちから「お金をちょうだい」と言われてお金をあげても、結局そのお金は子供たちが大人に持っていってしまって、その子たちのためにはならない。でも、ある時、どうしても手持ちがなくて、「ビスケットでもいい?」と言ったら、すごくうれしそうに食べていたのを見て、「この子たちはお金じゃなくて、食べるものが欲しいんだ」と思ったことが起業のきっかけだったと聞きました。私も、大学生のときにカンボジアにスタディツアーをしていて、現地の子供たちにお土産をねだられて心苦しかった経験があったので、すごく共感できました。
――実際に、どんな人が『fuubo』を利用しているんですか?
松清:実は、通りすがりの人が多いんです。『fuubo』にチラシを入れているので、その場で「これ、なんだろう?」って登録して使ってくださるようにもなりました。あとは、メディアの露出によって、「テレビで見た!」という声もよく聞きます。
――商品を購入したお客さんの反応はどうでしたか?
松清:お客様からは、「その場で食べるんだったら賞味期限とか気にしないし、安く買えるのはありがたいね」「いつでも自分の都合のいい時に、商品を受け取れるのは良いね」という声や、「SDGsの取り組みに気軽に参加できるのはいいね」といった声をいただいています。多くの方に注目してもらえるということは、それだけみなさんが食品ロスの削減に関心を持っていらっしゃるんだと思います。
――『fuubo』を開発するまでに、苦労したことはありますか?
松清:食品を扱うということで、仕入れ先とのやりとりや設置場所など、各方面との調整が必要でした。この無人販売機も、すでにある冷蔵庫を持ってきたのではなく、『fuubo』のために受注生産で1から作ってるんです。最初から組み立てて、セキュリティ面においても、防犯カメラを設置したりと、全部オリジナルのものなので、1からやるということが大変だったと思います。
買い物は賞味期限の近い手前から取って食品ロス削減を
――食品ロス削減のために、私たちにもできることはありますか?
松清: 小学生にまずしてもらえることといえば、買い物をするときに(賞味期限の近い)手前から商品を取ってもらうこと、『賞味期限』と『消費期限』の違いをちゃんと知ってもらうことだと思います。なんとなく理解している人は多いと思うんですけど、『賞味期限』は、過ぎても食べられないわけではないんですよね。そういったことがもう少し広まって、消費者の意識が変われば、企業も変わって、社会全体で食品ロスを減らす動きに繋がると思います。使わない電気を消すことや、水道をちゃんと閉めることなど、小さいことの積み重ねでも、子供たちの意識が変われば、10年後、20年後の社会が変わると思います。
――この取り組みを通して、社会に伝えたいことはありますか?
松清:社会が変わるには、一人一人の心掛けが大事だと思うので、「自分くらいいいや」の意識をみんなが持っていると、なかなか良くならないと思います。SDGsを「意識が高い人のもの」ではなくて、“自分ごと”として捉えてもらいたいと思っていて、私たちも、意識が高い人だけが反応するものではなく、SDGsに興味がない人にもいかに広めていけるが大事だと思うので、いろいろな人に興味を持ってもらえるように工夫をしていきたいです。私たちも頑張りながら、社会全体として「何が自分にできるかな」と“自分ごと”に考えてもらうことが大切だと思います。
――これから目指していることはありますか?
松清:まだ会社もできて5年目、『fuubo』も誕生して半年で、まだまだ完成形ではなく発展途上のサービスなので、私たちも模索しながら、今後も広げていくときにはやり方を変えたりすることはあると思います。最先端の取り組みに向けて、志を持って頑張っているので、応援していただけたらうれしいです!
スマホひとつで商品を購入して受け取るだけで、食品ロス削減に貢献できる無人販売機『fuubo』。初めてチャレンジしたりょうかちゃんとひなたくんも、最先端の買い物にワクワクしながらお話を聞いていました。大人から子供まで気軽に食品ロスを考える、これからの『fuubo』の広がりがとても楽しみです!
食品ロス削減BOX fuubo
https://fuubo-nofoodloss.com