地球環境への負荷が小さい栽培方法で、おいしいお菓子をつくる洋菓子屋さん。
「シヅカ洋菓子店 自然菓子研究所」 栗原代奈さんに、
優しい原料を使用したお菓子のこだわりについて、お話を伺いました!
2021年3月に、白金高輪の住宅街にオープンした『シヅカ洋菓子店 自然菓子研究所』。
「地球環境と身体に優しい」をテーマに、自然な栽培方法で収穫された原料を使用し、シンプルで素朴なおいしいお菓子を製造・販売しています。
店内には、ありのままの素材をいかしたビスケット系の焼き菓子が約10種類のほか、フィナンシェ・マドレーヌなどの焼き菓子が約10種類、ショートケーキ・シュークリーム・ロールケーキ・モンブランといった4種類の生菓子を揃えています。
地球環境への負荷が小さい栽培方法で収穫された原料をなるべく使用し、その原料本来の持つ深い味わいを感じていただくため、極力手を加えないというのが『シヅカ洋菓子店』のコンセプト。
お菓子の原料には、埼玉県産や北海道産小麦、キビ糖、有精卵、北海道産バターなど国産素材を使用し、「“優しい”にクローズアップしたおいしさを目指しています」と語るのが、今回の活動をスタートした『株式会社ディースレッド』の代表・栗原代奈さんです。
この事業を始めるまでは、高級チョコレート店『ピエール・マルコリーニ』で活躍されていた栗原さん。2020年8月に会社を退社されてから約2か月間をかけて『シヅカ洋菓子店』のブランドの構想を固め、2021年3月に東京・三田に洋菓子店を構えました。
「地球と人に優しいお菓子って、どういうこと?」 そんな疑問から、今回の取材にやってきたのは、子ども記者のさやかちゃんとゆうりちゃん姉妹。素材のおいしさにこだわった『シヅカ洋菓子店』の取り組みについて、お話を伺ってきました。
つくるのは、“原点回帰”のお菓子
――なぜ「シヅカ洋菓子店」を始めようと思ったんですか?
栗原:コロナ禍になり、人流が止まったことで「空気が綺麗になった」「海が綺麗になった」というニュースを知ったのが、このブランドコンセプトを思いつくきっかけになりました。気候変動を肌で感じる時代を迎え、世界各国では脱炭素の取り組みやSDGsへの取り組みが急務になっているニュースをたびたび目にするたびに、自分もなにか行動を起こさなければと思い立ち、SDGsを真正面から受け止める事業をスタートしました。
――ほかで販売されているお菓子と『シヅカ洋菓子店』のお菓子は、なにが違うんですか?
栗原:現在流通している一般的なお菓子は、甘味料や香料を使用して“〇〇味”といった味付けが調整されているお菓子だと思います。シヅカ洋菓子店では、そういった風味をはっきりさせるための化学的な食品添加物は使わず、環境に配慮した原料の味わいを感じてもらえるよう、原料そのものの旨味を最大限に引き出したシンプルなお菓子を作りあげています。
例えば、我々が作っている「レモンビスケット」は、香りを出すために香料ではなく、瀬戸内レモンの皮を使用しています。レモンの香料は山ほどあってすごく安いんですけど、皮を使ったら10倍、20倍の値段になるんです。けれど我々は、ただの風味ではなくて、本物を使ってストレートに表現していく、まさに“原点回帰”のお菓子なんです。
――お菓子を作るために、これまで苦労したことはありますか。
栗原:ものづくりは、「本当においしい」ということがベストなので、そのおいしさを追求して、「地球と人に優しい」をコンセプトにした味の表現作りが一番大変でした。同僚のシェフと半年間をかけて原料を選定して、その味わいを最大限に引き立たせるためのレシピづくりと、優しい味わいを表現することに時間を割きました。SDGsや環境に配慮して、「もっと食べたい」「知り合いにも紹介したい」という連鎖に繋がるような商品を目指して、「シヅカ洋菓子店らしい味とは何か」を一生懸命考えながら開発していきました。
――お菓子を販売して、お客さんの反応はどうでしたか?
栗原:以前、ギフトでお菓子を貰ったお客様が「おいしくて買いにきた」と訪ねてくださったり、お客様が「ギフトで渡した時に、相手からお礼の連絡があった」と言ってくださったことがうれしかったですね。「いつも、どんなにギフトでお菓子を渡しても、お礼は一度もきたことがなかったのに、それぐらい喜ばれた」ということがお客様もうれしかったそうで、温かくありがたい反響をいただいています。我々もすごくやりがいのあることですけど、自分たちのペースでゆっくり、しっかりと、そういった輪を広げていくことを大切にしたいと思っています。
まずは、お菓子屋さんとして絶対においしいものを
――これから、取り組みたい目標はありますか?
栗原:今年、母親の実家がある奄美大島が世界自然遺産に登録されたんです。けれど、そこは、とても過疎化が進んでいて、若い子たちが入ってこない問題もあるので、「地域復興」の意味も兼ねて、キビ糖やマンゴー、パッションフルーツなど、自然遺産で採れる原料を使って、最終的にはお店を構えられたらいいなと考えています。その土地の銘菓を生んで、若い子たちや旅行者から“地産地消”のものを買っていってもらえることが一つの表現だと思っています。
――子どもの私たちにも、できることはありますか?
栗原:子どもたちが一番身近に取り組めるのは、フードロスの削減だと思います。日本は大変恵まれた国で、食べ物がたくさんあり、モノが豊富にあります。しかし、飢餓で苦しんでいる国があることを知っていただいて、自分たちが責任をもって頼んだご飯は残さず食べること、食べきれないご飯やお菓子は買わないことなど、世界の人たちを意識して行動することが大切だと思います。
――最後に、社会に伝えたいメッセージを教えてください!
栗原:お菓子屋さんなので、まずはお客様に喜んでいただくために、おいしいものを探究していきたいです。「環境に配慮しているから、人に優しいから、買ってください」という無理な市場ではなくて、環境への負荷が小さい栽培方法で生産された原料を使用し、人にも優しい商品であれば、無理に宣伝をすることなく、お客様がすんなりと求めてくださるはずです。そういったことが徐々に知れ渡ることで、小さな輪が少しずつ大きな輪になり、全国の、そして世界のお客様がシヅカ洋菓子店のお菓子をお求めになることを願っています。
地球環境や人々に配慮しながらも、「どこよりも、何よりもおいしいこと」を胸に、素材のおいしさをいかしたストレートなお菓子づくりを実現した栗原さん。自然と調和したお菓子を味わいながら、さやかちゃんとゆうりちゃんは熱心にお話を聞いていました。ここ『シヅカ洋菓子店 自然菓子研究所』では、持続可能な社会を目指して、地球と人々に優しいモノづくりを続けています。
シヅカ洋菓子店
住所:東京都港区三田5-4-10
TEL:03-6381-7770
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜日
https://www.shizuka-labo.jp/