“SDGs学び隊”が行く!

誰もが笑顔になれる社会に 久遠チョコレート

障がいのある人や悩みを抱える若者ら、多様な人々が“一流のショコラティエ”を目指して働くチョコレート屋さん!

トップブランド「久遠チョコレート」の代表・夏目浩次さんに、

“誰も置き去りにしない社会”に向けた取り組みを伺いました!

愛知県豊橋市に本社がある「久遠チョコレート」をご存知ですか?2014年のオープン以来、今年度で全国に34店舗、52拠点を持ち、チョコレートの製造・販売を行うチョコレート屋さんです。

ここでは、全国のスタッフ約550名のうち、約350名が障がいのある方で、そのほかにも働く時間が限られている子育て中のお母さんや、引きこもりや不登校といった悩みを抱えた若者、介護従事者、LGBTQといった多様な方々が働いています。

「お菓子の学校に出て勉強してきた方や、お菓子の世界でキャリアを積んできた方は、550人中5%くらいです。9割以上の方がお菓子作りの未経験者で、それでも一流のブランドを目指していこうともがいています」と夏目さん。スタッフが一丸となって商品開発を進め、チョコレートだけでなく半生菓子や焼き菓子など、全国で400種類以上の商品を揃えているそうです。

そんな「久遠チョコレート」が、今年9月に28店舗目となる「久遠チョコレート(QUON CHOCOLATE) 厚木店」をオープン! 記念すべき開店初日にやってきた子ども記者のりゅうとくんとゆのちゃんが、「一般社団法人ラ・バルカグループ」代表・夏目浩次さんに、これまでの歩みから今後の目標まで、さまざまなお話を伺ってきました。

“みんなが凸凹違っていい”チョコレート屋さんを目指して

――どうして、チョコレート屋さんを開いたんですか?

夏目:私自身は、この会社を創業して18年になるんですけど、最初はパン屋さんとしてスタートしました。障がいのある方達が、学校を出た後に働く場所が極めて少ないと知って、なぜ“障がい”という属性を持った途端に、社会の中での選択肢がなくなるのか、そんな社会のあり方に非常に理不尽さを感じて、パン屋として独立したのが始まりです。でも、パン屋やカフェだと、物のスピード軸に人が合わせていかなくてはいけないので、そこについていくには誰かを排除しながらやっていかないと、顧客満足度が維持できなかったんです。

夏目:そこで、「ちゃんと経済的な成長と自立をしながらも、誰も置いていかないものはないのか」と考えていた時に、ショコラティエの野口和男さんに出会いました。「チョコレートは正しい材料を正しく使えば、誰でもおいしいものが作れる」ということで、彼のラボに働きにいくと、本当に豊富な手作業と簡単なルーティンワークの繰り返しで、ハイブランドな商品をどんどん作っていたので、「これは誰も置いていかないな」と思いました。チョコレートは、失敗したらまた溶かせばいいし、やり直しがきく、誰も排除しない仕組みと素材がここにあったんだと気づいたのが、チョコレートの事業を始めたきっかけです。

――ここでは、障がいを持った人や、いろいろな人が働いているんですよね。

夏目:“障がい者が働くブランド”ということではなくて、人はそれぞれ、凸凹違っていいんじゃないかと考えています。みんなに“できることとできないこと”があって、それで人を差別して、なにかを排除していくあり方ではなくて、凸凹のパズルを合わせて、どのように成長していけるのかを、社会が本気で考えていかなくてはいけないと思っているので、「凸凹違うみんなで、一流のブランドを目指していこう」と、そのためにもがいていますね。だから、単純に買っていただくお客様が「美味しい」と喜んでいただいて、「誰かにプレゼントしたいな」と思ってもらえるものを作っていこうとしています。

ホットチョコレートを試飲させていただきました!

――チョコレートの種類がたくさんあって、驚きました!

夏目:天候が違えばまた味わいが違いますし、日本でも北海道と沖縄があるみたいに、同じ国でも産地が違えばまた文化が違います。日本では、チョコレートというと、ビター・ミルク・ホワイトといった3種類の考え方ですか、国が違えばさまざまなので、実は「チョコレートって多様なんだよ」と、「カカオってすごく多様性があるんだよ」ということをカジュアルに伝えていこうと考えています。

全国で150種類もの味が楽しめる、豊富なバリエーション!

「仕方ない」と見て見ぬふりで終わらせない

――これから、解決していきたいことはありますか?

夏目:社会課題は、今日明日で解決できるものでもないですよね。大事なことは、スマートに解決することではなく、そこに向かってどれだけ本気で真剣にもがけるかだと思っているんです。そこには、いろいろな高い壁や失敗があるけれど、まず『SDGs』という言葉によって、考え方や共感が広がったことは第一段階として、その次にあるべき姿は「できてます」という発表会ではなく、泥臭くて鈍臭いけど、「でもこれだけ本気で向かってるんだよ」という社会や世界の本気度なんじゃないかなと思っています。

「久遠チョコレート(QUON CHOCOLATE) 厚木店」で働くスタッフの皆さん

夏目:常々思っていることは、自分一人一人の身の回り360度をしっかりと見ると、「おかしいな」と思うことがたくさんあるんですよね。高度な成長をしてきたこの国と世界には、その裏で生まれてしまった理不尽を「仕方ない」と見て見ぬふりをしてきたんですけど、これからの時代はちゃんと立ち止まって「おかしいな」と思うことに直視して、問題にちゃんと向き合いながらどうやって成長していくかを、僕らやその次の時代が真剣に考えていかなきゃいけないんですよね。

ドライフルーツやナッツを詰めた「久遠テリーヌ」が人気だそうです!

――子どもの私たちにも、できることはありますか?

 

夏目:自分の周りで「あれ、おかしくないかな?」と思うことに敏感になってほしいですね。おかしいと思ったら、「仕方ないんだ」ではなくて、ちゃんと直視して、そこから次の一歩が始まるんだろうと思っています。あとは、極めて単純に、「泣いている人がいたら笑えるようにする」「困っている人がいたら手を差し伸べる」ことですね。誰かが泣いているなと思ったら、「仕方ないな」ではなくて、そこに向かって行動して考えてほしいです。泣いている人がたくさんいる世界よりも、笑っている人がたくさんいるほうが絶対に幸せなわけで、困っている人がいたなら、そこに耳を傾け、手を差し伸べていくべきだと思うんです。

夏目:男性・女性、障がいがある・なしといった属性がついた途端に、生き方が狭められる社会は、僕はナンセンスだと思っています。だから、おかしいものをおかしいままにしておかないこと、ナンセンスなことに敏感になって、物事に直視をできる社会を作りたいと思っています。

「生きづらさ」を抱える人々の声に耳を傾け、経験が無いどんな人でも、おいしいチョコレートが作れる仕組みを構築した夏目さん。凸凹違ったみんなが働く職場を見学しながら、ゆのちゃんとりゅうとくんは真剣にお話を聞いていました。「久遠チョコレート」は、多様な人々が“誰も置き去りにされない社会”を目指して、今日も歩み続けています。

QUONチョコレート豊橋本店

住所:愛知県豊橋市松葉町1-4 サカキバラビル1F

TEL:0532-53-5577

営業時間:10:30~20:00

定休日:月曜日

https://quon-choco.com