ワインのコルク栓が、子どものおもちゃや椅子に生まれ変わる!?
東京を“再資源の宝庫”と捉え直す「TOKYO CORK PROJECT」北村真吾さんに、
『コルク栓』を再資源化する取り組みについて伺いました!
都内の飲食店でコルクを回収して再生!
「大量消費都市」といわれる東京では、今日もたくさんのお酒が消費されていますよね。例えば、東京だけで年間約 1.5 億本も消費されているワイン。しかし、ワインを楽しんだ後、ボトルはリサイクルしても、コルク栓はただ廃棄している人も多いのではないでしょうか。日本で100%輸入に頼っているコルク栓ですが、実は再生可能な資源なんです。
そんなワインとともにコルクを大量に消費する東京を、「再生資源の宝庫」と捉え直し、新たな事業を始めたのが、株式会社GOOD DEAL COMPANY代表の北村真吾さんです。使用済みのコルク栓を回収し、資源に再生化させる取り組み「TOKYO CORK PROJECT」を2010年からスタートしました。
「TOKYO CORK PROJECT」では、東京都内の飲食店を中心に、使用済みコルクの回収BOXを設置。現在は、全国で約750店舗以上の飲食店が協力し、22トン、360万本ものコルクを回収しています。(※2019年時点)回収されたコルクは分別・洗浄・粉砕・圧縮され、再生資源の材料として、コースターや椅子、壁の材料、つみきのおもちゃなどに生まれ変わります。
再資源化されたコルクを使ったコースター
元々、動物好きだったという北村さんは、小学校の作文でも「環境問題」を扱うなど、環境に対して強い関心を持っていたといいます。過去に飲食業に従事していた際には、「1本1本の抜栓されたコルクを“一ヶ月間溜めてから捨てる”という習慣があったので、1000本近いコルク栓を目の当たりにして衝撃を受けました」と北村さん。店舗から排出されるフードロスや廃棄物などの環境トレードオフに疑問を持ったことが、今回のプロジェクトを始めるきっかけになったそうです。
そんな“コルク再生プロジェクト”をより深く知るために、取材にやってきた子ども記者のれいなちゃんとりゅうとくん! 捨てればゴミになるコルクを活かし、資源に再生化する北村さんの取り組みについて、お話を伺ってきました。
コルク栓が子どものおもちゃに変身!
――どうして、コルク栓を再利用しようと考えたんですか?
北村:日本で育てられない天然素材というところもありますし、コルク栓が、身近に近い資源循環を生める素材だなと感じたんですね。今、ビン・カン・ベットボトルは当たり前のようにリサイクルする仕組みができていますが、実際にリサイクルされたものがどう活用されているのかをあまり実感される機会がないのかなと思いました。
北村:コルクは、その風合いを残したままインテリアやコースター、おもちゃになる素材なので、その再生資源を生活の身近なところに置くことによって、環境に対する意識がより高まればいいなと考えています。
子どものおもちゃ「つみき」に再生した「TOKYO CORK BRICK」)※このおもちゃ1セットにつき、約250本分のコルク栓が使用されているそうです!
つみきが「軽い!」と夢中になるりゅうとくん
――なんで、コルク栓が“おもちゃ”になると思ったんですか?
北村:コルクの特性が、子どもが扱うおもちゃに適していると感じたからです。弾力性・軽量性・摩擦性がある「つみき」は、崩したときにフローリングが傷つかない、音があまり大きくない、つみきを投げても無垢な木よりはダメージが小さく、摩擦があることによって斜めに積んでいくこともできるので、そうした創造性を高めることがコルクによってできるのかなと感じています。
奈良県の吉野杉など日本の木を使ったつみきのおもちゃ「tumi-isi(ツミイシ)」とのコラボレーション
――大人が使っていたものなのに、子供のおもちゃになっているのが面白いと思いました。
北村:大人が楽しんだ後のコルク栓でも、そのあとは子供たちの役に立つというストーリーが大切だなと思っています。これからの社会は、常に『新たな世代のために何ができるか』ということを考えていかなくてはいけないなと思っていて、こういった課題を捉えるためにも、「自分の子供や孫の世代に何を残せるんだろう」と考えてもらうことが大事だなと思います。実際に大人が使ったものが、子供に対してポジティブになることで、より“自分ごと”として環境の課題を感じてもらえるのではないかと考えています。
“捨てられること”を前提にしたものづくり
北村:プロダクトに対してもデザイン性というのはすごく大事だなと感じています。というのも、お客さんに自然に手にとってもらう購買動機は、「もったいない」ということではなくて、シンプルにそれが「好き」だとか、そのお客様の好みに合うという要素がすごく重要だと感じたからです。
――ほかにも、考えていることはありますか?
北村:作る前から捨て方を想定して開発していくということですね。分別しやすいプロダクトの構造であるとか、不燃や捨てづらい素材をなるべく使わないように配慮したものづくりを考えています。地球を汚さないことや、適切に処理できる方法を考えていくべきだと思っています。
――子どものイベントもやっているんですよね!
北村:正直、そこで遊んでくださるお子様は、そこまで深く考えずに、シンプルに楽しいから遊んでくれると思うんですけど、そういったお子様を連れてくる親御さんに対して、なにかを感じてもらえればいいなと考えてます。子供にはのびのびと楽しく遊んでもらえるものを、どういうふうに我々で企画できるかというところが重要かなと思います。
――環境問題について、私たちにもできることはありますか?
北村:「これって何からできてるの?」とか、「どうやって作られてるの?」とか、そういう質問を親にするのがいいのかなと思いますね。「これってゴミになっちゃうの?」とか、「どういうふうに捨てるの?」とか、シンプルな問いかけをすることで、親はハッとすると思います。大人からしたら、子どもってものすごく強い力を持ってると思うので、大人たちに思う存分ぶつけられるのがいいのかな。一緒に勉強するスタンスがいいと思います。
『tumi-isi(ツミイシ)』を「楽しい!」と上手に積み上げていくれいなちゃん
――これから目指したいことはありますか?
北村:やっぱり、心の中の本当の豊かさということに目を向けていくのが大事かなと思うので、そうした社会づくりができたらいいなと考えています。今は限られた分野で再生資源を活用していますが、より広域に、例えば建材であるとか、私たちの暮らしになければならないものに対して、資源循環を作り出せたらいいなと考えています。
大量消費社会に疑問を持ち、コルク栓を新たな資源へと生まれ変わらせた北村さん。大人が楽しんだワインのコルク栓が、子どもが楽しむおもちゃに変わっていく姿に、れいなちゃんとりゅうとくんもワクワクしながらお話を聞いていました。
リサイクルされたコルク栓が、次はどのような姿に変貌を遂げるのか……。「捨てる」と思っていた物への、見る目が変わってきませんか?
TOKYO CORK PROJECT