生物たちが“ありのまま”に集まり暮らせる空間を。
地域の“ビオトープ”となる場所を目指す「桑袋ビオトープ公園」濱崎祥さんに、
豊かな自然を利用した生き物の環境づくりについて、お話を伺いました!
“ビオトープ”という言葉を知っていますか?
「ビオトープ」とは、ドイツ語の「bio(生きもの)」と「topos(場所)」を組み合わせた造語で、生物が自然な状態で生息している空間のことを意味します。
世界中で都市化が進む中、人の手によって生物を持ち込むのではなく、生物が生息しやすい環境を整えることで、生物たちが自然と集まり暮らすことができるのです。

そんな地域の「ビオトープ」となる場所を目指しているのが、足立区にある「桑袋ビオトープ公園」。かつての足立の自然を取り戻すため、2005年に桑袋小学校跡地に開設され、今年で16年目を迎えました。
ここでは、さまざまな生き物が暮らせる空間を作りだそうと、園内全域をいくつかのエリアに分け、草地・林地・水辺など各環境の特色が出るように管理を行っています。この取り組みによって、現在は250種類の昆虫、195種類の植物、41種の鳥類など、さまざまな生き物が生息しているそうです。

「桑袋ビオトープ公園」では、地域の野生の生き物に出会えるだけでなく、子どもから大人まで楽しく学べる自然体験プログラムやイベントも実施しています。そんな自然豊かな公園を見学した子ども記者のれいなちゃんとりゅうとくんが、桑袋ビオトープ公園自然解説員の濱崎祥さんに、お話を伺ってきました。

“ビオトーブ”はどうして必要?
――なぜ「ビオトープ」の公園を始めたんですか?
濱崎:「桑袋ビオトープ公園」がある場所は、以前は小学校だったんです。統廃合によってその場所がなくなるということで、地元の方々から、「自然を学べて、生き物と身近に触れ合える場所が欲しい」といった声をいただいたと聞いています。公園を作るにあたって、木などは新しく植えたんですけれども、もうその木もかなり成長して、今は立派な林ができていますね。

原っぱで見つけたバッタを、実際に触ってみるりゅうとくんとれいなちゃん
――どうして「ビオトープ」じゃないといけないんですか?
濱崎:人が手を加えていない自然ですと、環境によっては、生き物がいなくなったり、種類がどんどん少なくなったり、強い生き物だけが残る場所になってしまいます。そういうものを人の手で管理してあげることで、その環境が保たれるようになるんです。
――どうすれば、野生の生き物がやってきますか?
濱崎:僕たちも「たくさんの種類の生き物が公園にきてほしい」と思っていますが、だからといって、僕たちが外から生き物をとってきて、この公園に逃すということはしていないんです。僕たちがやっているのは、「環境を整えてあげる」ということで、なるべく園内にいろいろな環境を作っています。

濱崎:例えば、公園にある原っぱ1つでも、低い草があったり、膝くらいの高さの草があったり、人と同じくらい高い草があったりしますが、草の高さを変えることで、集まってくる虫や生き物が違ってくるんです。つまり、園内に違った空間を作ることで、その場所が好きな生き物を呼ぶようにしています。地面のほうが好きな生き物もいますし、草に止まっていることが多い生き物もいます。高さが違うということは、植物の種類も違ってくるので、その植物を好きな生き物もいて、やってくる生き物が変わってきます。
公園には23区内の絶滅危惧種もやって来る!
――どんな珍しい生き物が見られますか?
濱崎:哺乳類では「タヌキ」もいます。毎日、夜になるとやってきているみたいです。昼は見れないので、生き物が通ると自動で撮影するカメラを設置して、映像は撮れていますね。東京都23区内の絶滅危惧種に指定された生き物ですと、特に有名なのは、水辺にいる青い鳥の「カワセミ」です。だいたい週に2~3回くらいのペースで見ることができます。とても綺麗な色をしているので、来園した方に教えてあげると、みなさん喜んでいますね。

夜、林にやってくるタヌキを自動カメラで撮影しているそうです!
――ここではイベントもやっているんですよね。
濱崎:はい。皆さんが一番よくやられるのは、「ザリガニ釣り」です。こちらは、毎日やっておりまして、無料で道具も貸し出しています。あと、毎週日曜日にも、さまざまなイベントをやっていて、例えば今年は7月に、「かい掘り」を行いました。池の水を抜いて、池の中にどんな生きものがいるか捕まえて調査したり、池の底にヘドロが溜まっているので、それを参加者でバケツリレーをしてヘドロをかい出したりするイベントです。水を抜くことによって生き物がとりやすくなるんです。

今年の4月から釣れたアメリカザリガニは、2万匹以上にもなるそうです!
――イベントで、思い出に残っていることはありますか?
濱崎:以前、職場体験に来てくれた中学生に、僕たちの仕事を体験してもらいつつ、自然についてお話をさせてもらったんです。すると最後、その子たちが帰るときに、「足元を見るのが楽しくなったね」と二人で話していたのがうれしかったです。少しでも興味を持ってもらえることで、人生が充実して、楽しくなってくれたらいいなと思いました。

釣ったアメリカザリガニに触ってみるりゅうとくんとれいなちゃん
――この活動で、子どもに何を伝えたいですか?
濱崎:子どもたちに限らず、大人のみなさんにもですけど、この公園での活動を通して、自分の身の回りの家や学校の近くに、こういう世界があるんだよと気づいてもらって、少しでも自然のことに興味を持ってもらえたらいいなと思っています。

濱崎:引き続き、身近な自然についての情報を発信したり、イベントを行ったりすることで、この公園が、生き物の魅力を発信する拠点になればいいなと思っています。
――私たちにも、何かできることはありますか?
濱崎:まずは自分の身近な自然、例えば毎日通る道で虫でも鳥でも植物でも何か自分のお気に入りが見つかると、それについて知りたくなってくると思います。
お気に入りが増えていくと、毎日通る道を歩くのが前より少し楽しくなってくると思います。そのお気に入りがずっと見られるようにするためにはどうすればいいのかというのを考えることができると素晴らしいと思います。まずは自分の身近な自然に興味を持ってくれたら、そこが始まりなのかなと思います。

雨が降って出てきたカタツムリ

「小さい!」と驚くりゅうとくん
――これから目指していることを教えてください!
濱崎:当初から、この公園を拠点として「持続可能な環境を作っていこう」という目標で活動しています。この公園を中心として、地域の自然がずっと続いていくような場所にしていきたいと思っています。

ありのままの姿で生息するたくさんの生物を、興味津々の様子で観察していたれいなちゃんとりゅうとくん。ここ「桑袋ビオトープ公園」では、地域の野生の生き物たちが自立して生息・生育できるよう、豊かな自然を利用した環境づくりが行われていました。
桑袋ビオトープ公園
- 住所
- 〒121-0061 東京都足立区花畑8-2-2
- 開園時間
- 9時~17時(2月~10月)
9時~16時30分(11月~1月) - あやせ川清流館
- 開園時間に開いています。
消毒のため、12時~13時は閉館しています。 - 休園日
- 月曜日(祝日の場合、直後の平日)
年末年始(12月29日から翌年1月3日) - 入園料
- 無料
- 駐車場
- 無料:普通11台(身障者用2台含む)